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2009年10月29日 (木)

プロモンテ VL23 は使えるテントか?①(検証編)

便利度 :★★★★☆
工作度 :☆☆☆☆☆
推薦度 :★★★☆☆
危険度 :☆☆☆☆☆
(厳しいですが、改造前のデフォルト状態ではこんな評価です)


※旧VL23と現行のVL24の違いは、フライの素材がリサイクルポリエステルから通常のポリエステルに変更された程度でほぼ同一の製品です。


「装備をシンプルかつ軽量に・・・」という観点から、TPOをわきまえるなら、タープやフロアレス・シェルターも悪い選択だとは思いませんが、荒天の稜線では些か辛そうですし、虫の多い季節には防虫対策にも気を使わなくてはなりません。

私自身、北アルプスの2000メートル前後の標高だから・・・、と油断していたら、一晩中“ヌカ蚊”の猛攻撃に遭った経験もありますので、油断は禁物です。(“ヌカ蚊”は荒いモスキートネットの目なら潜り抜けるほど小さく、毛髪の中にも入り込んで吸血し、小さい割には強い痒みと腫れを起こしますので、私はブヨ以上に嫌いです)
そんな吸血性の虫が多いと予想される時には、タープに拘るより、やはりモスキートネット付きでフロア一体型のテントかシェルターを持って行ったほうが圧倒的に快適に眠れますよね。

そして、最近はBDのライトシリーズに代表されるフロア一体型のシングルウォール・シェルターに注目が集まっています。
この種のシングルウォール・シェルターは私も使用していますが、通常のテントとさして変わらぬ居住性を持ち、しかも軽量・コンパクトという事でUL系ハイカーに特に人気が高いようです。

しかし、私の使用した感想としては、確かに軽いことは軽いのでTPOを考えて使用するなら非常に効果的なシェルターとなりますが、その反面前室を持たないこの種のシングルウォール・シェルターは(ソロだったら良いのでしょうが)、二人で使用するとなると靴やクッカーなど装備の置き場に困る事も多く、また強い雨風の時の居住性にも問題があるというのも事実です。
また、HEX3のようなモノポール・シェルターは、きちっと張れれば耐風性も強いですし、居住性も良く装備の置き場や調理場所にも困ることは無いのですが、実際には日本の山の多くのテント場はペグが打ち難い場所も多いため、設営に手間取るばかりでなく、そんな場所ではこの種シェルターの耐風能力を十分活かせるとは限りません。
特に積雪期には竹のアンカーでも埋めないと所定の強度は確保できないと思いますし、裾の部分の積雪対策にも苦労しそうです。

そんな訳で、日本の山のテント場では、アライテントモンベル製あるいはエスパースシリーズ等の同じような形のテントを多く目にしますが、これは日本の“山屋”が没個性的だからという訳ではなく、日本の山岳地帯の状態と、四季の気候の中で、経験的に安全性・汎用性・快適性を突き詰めていった結果、同じ結論に行き着いたと考えてあげてください。

単純思考の“山屋”の辞書には、『天気が荒れてきたら、すぐに小屋に逃げ込もう』なんて軟弱な言葉は無いですから、自己顕示や他人とカブるのが嫌だという理由だけで外国製のヘンテコなシェルターを使うような冒険はしたがらないんですね・・・。(笑)
まぁ、少なくても現段階では、多少重くても自立式のWウォールテントという平凡な形式が、日本の山の風土や山行形態に最大公約数としてマッチしているということなのでしょう。

そこで、「シングルウォール・シェルター並みに軽いWウォールテントがあれば・・・」などと考えていたら、丁度“プロモンテ(旧ダンロップ)”から従来のVLシリーズをさらに軽量にフルモデルチェンジしたWウォール・テントが発売されたのです。
とはいえ、私はこの種のテントとしては既にアライのトレックライズとエアライズ(いずれも旧タイプ)を使用していますので、興味はありましたが購入する気までは起きませんでした。

Vl33_1hpb

そんな折、たまたまこの新シリーズの VL-23 というテントを購入した知人が、「テントに気になる点があるので何とかできないか?」と相談してきたので、このテントの検証を兼ねて仕事を引き受けることにしました。
・・・と、いう訳で、今回はこのテントの特徴と、その改良について記してみたいと思います。

【テントの特徴】(概要はメーカーのサイトをご覧ください)

①本体とフライに20デニールの極薄ポリエステル生地を使用しているためとても軽量です。
ポリエステルはナイロンのような吸水性も無く、紫外線による劣化も起き難いので長期間耐久性を維持してくれそうです。
とはいえ、生地が薄いため設営にあたっては慎重な取り扱いを要求され、またガイライン取り付け部など、強風時の耐久性が気になる部分(後述)もあります。

また、本体実測重量は1480グラム(ガイライン含む、ペグ・収納袋除く)でした。
カタログデーターでは1400グラムとなっていますが、この数字はガイラインも除いた重さにしても「?」ですね。
重さの表記については各テントメーカーにより基準がまちまちで、正しい比較ができないのはこまります。
ザックに入れる状態(本体+収納袋+ガイライン)で、ペグを除いた実測重量での表示に統一(もしくは併記)してくれると比較がしやすいのですが・・・。

②組み立ては極めて簡単です。初めから中央のハブでX字型に連結されたフレーム(画像↓㊧)の末端を本体四隅の短いスリーブに挿入します。
フレームの中央がハブで固定されているのでこの状態でもしっかりと自立します。(画像↓㊨)

Vl23_2 Vl23_1_2 

次に、中央(画像↓㊧)と各フレーム3箇所ずつを幕体のクリップ(画像↓㊨)で順次フレームに連結させていけばテント本体が立ち上がります。

Vl23_2_2 Vl23_3 
  
【吊り下げ式はスリーブ式よりも強度が弱そうに感じますが、ブランド名変更以前のこのメーカー製の“ダンロップテント”(同様な吊り下げ式の超ロングセラーシリーズでした)は、私も冬山を含め、ずいぶんお世話になり、かなりの強風や荒天も経験しましたが、張り綱さえシッカリ固定してあれば特に吊り下げ式だということでの問題は感じませんでした。同じ伝統を受け継ぐこのテントについても強度に関する不安は杞憂だと思います(たぶん?)。】


そして、フライを被せ、フライ内側の4箇所の紐をフレームに縛り(この部分は貧弱な造りなので改造予定→後述)、末端のバックルを本体下部に連結すれば、あとはラインをペグダウンして完成です。
また、BDのシングルウォールシェルターのように生地エピックだったり、あるいはシルナイロンの場合は収納時に空気の抜けが極めて悪く畳むのに一苦労しますが、それに比較してこのようなWウォールテントの場合は撤収も非常に簡単です。

Vl23_11
(テント生地を袋縫いにした貧弱な紐でフレームに縛るだけ!しかも紐は縦1本の直線縫いで取り付けてある)

③前室はファスナーの位置がテンションラインとオフセットされるなど、造りや使い勝手は悪くないのですが、予想外に小さめです。軽量化のためなのでしょうが、此処はもう10cm大きく作ってくれたほうが使い勝手は数段向上するはずです。
しかし、小さいといっても2人分の靴とクッカー類を置くだけの広さは確保されています。(画像↓)
また、カタログには前室と同じ大きさの後室もあるような図が記載されていますが、あれは完全な誤表記で、後室は事実上ありません。メーカーには早急な訂正をお願いしたいと思います。

Vl23_4

④入り口のドアは有効開口部が小さく、中央にないので出入りの使い勝手はあまり良くありません。
また、ドアパネルを開放した状態でループ&オシャブリで留めておけるのですが、端から丁寧に巻いてからでないとドア端の部分が垂れ下がって非常に邪魔なので、何とか改良を望みたい所です。
また、モスキートネットが外側になっているドアは換気の面では使い勝手が良さそうです。
できれば、ドアの反対側の本体下部にもベンチレターあれば、さらに換気が良好になるでしょう。

⑤VL23では 、VL33・43と異なりフライのサイド側下縁中央に張り綱を取り付けられるように設計されていません。
短いスパンですが、短辺の中央もショックコード等で外側に引くようになっていれば、風でバタついたり、フライが本体に張り付いたりしないと思います。(ここも改良予定→後述)

⑥フレームはプレベンドはなくストレートなのですが、中央のハブで2本が繋がっているため収納には慣れが必要で(?)、やや嵩張ります。
また、フレーム径は中央部がΦ9.5mm末端がΦ9㎜とやや太めです。
軽量テントではΦ8.5mm以下を使っている物も多いのですが、このテントでは強度を出すため太めの素材を使いつつ、天井部と末端で太さの異なる珍しい構造にして強度と軽量化のバランスをとっているのでしょう。
しかし、このためか普通のテントでは標準付属となっているリペアチューブが付いていません。山岳用テントを標榜するなら標準装備が当然だと思うのですが・・・。

まあ、フレームが頑丈という事は、ガイライン(張り綱)さえシッカリ固定されていれば、それなりの耐風性は期待できるという事ですね。


Imgp3888 Imgp3892
(中央部は末端より0.5mm程直径が太くなっている)

⑦全体に細部の設計が煮詰まっていないようで、ファスナーが波打っていたり、縫製もアライテント製などと比べるとやや丁寧さ・繊細さに欠ける感があります。

⑧その他、フライ用の収納袋(画像↓中央)が別に付いているのも他のメーカーには無い(?)良いアイデアだと思います。
フライだけをすぐ取り出せるところに仕舞っておけば、雨や風の中で休憩する時にツエルトのように使用することもできて便利そうです。

Imgp3897
(本体の収納袋㊨に、フライ㊥を一括収納することも可能)

★上記を含め、私個人の主観で総合的に判断すると、このVL23は同種の競合テント、“エアライズ2(アライテント)”“エスパース・デュオ(カモシカ)”と比較して、(軽いということを除けば)いま一つ見劣りする気もします。

その一つの理由は、上記2種は短辺130cmなのに、VL23は120cmと少々狭いからということなのですが、これは靴をテント内に収容しなければならない積雪期には、幅130cmが2人用のミニマムと私が考えるからです。
もちろん、前室に靴を置ける時期においてはこのままでも十分我慢できる寸法である事は確かなので、3シーズンのみで考えるならこの大きさでも不満はありません。
(ちなみに、私自身も夏場は、もっと狭くしかも前室も無いBDのハイライトも使ってます)

テントを軽く作る最も簡単な方法は、寸法を小さく作ることなのでしょう。
しかし、用途に合わせた最低限の寸法を確保しながら今以上の軽量化を図るのは、軽量化競争の中で逓減を続けたテントの重量がボトムに達した現在、そう簡単な事ではないでしょうから、どこで重さと大きさの折り合いをつけるかはメーカーのポリシーに任せるほかないのかも知れません。

まあ、テントを収容人数に対する重さ(軽さ?)だけで短絡的に評価する登山者も少なくないのですから、このように1グラムでも軽く仕上げようというメーカーのマーケット戦略も理解できない訳ではありません。

しかし、もしこのテントの短辺が130cm(長辺もできたら210cm以上)あって、フライに後室があって、そして本体後部中央下にベンチレターを兼ねた小さな窓があって、そこから後室にアプローチできたなら・・・、多少重くなっても、2人用で“3シーズン+α”の軽量テントとしては文句無くベストバイ・テントになると思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょう?。
ただ、軽ければ良いってもんじゃないような気もするんですが・・・。

★とは言え、全体を見れば素性の悪いテントではないようですので、細部の気になる部分に自分で手を入れ、少々チューニングすればもっと良いテントになりそうです。

自分が好意をもった製品ゆえ、辛口の評価になりましたが、本音を言うと私自身かなり欲しくなってしまった製品ではあります。(笑)

で・・・、次回は、この VL-23 をより良い状態にする改造について記事にしてみたいと思います。

(以下「改造編」に続く)


【余談ですが・・・】 -テントの収容人数・考-

大昔の家型テントの収容人数の基準寸法(モジュール)は、一人当たり6尺×1尺5寸・180cm×45cm、つまり1畳に2人、でしたが日本人の体格が大きくなった今ではこんな単位は現実的ではありませんよね。

上記のテントのメーカーは日本古来の“尺”を単位とした独自のモジュール(メーカーでは、1モジュールを概ね2尺×6尺8寸と考えているらしい?)を基準とし、2人用なので幅は4尺(121.2cm≒120㎝)と決めたようです。
そして公式サイトでも、尺寸の方が人間の身体感覚に適合している、とも解説しています。
しかし、尺寸自体、成人男子の平均身長が160cmに満たなかった近世以前の身体を前提にして決められたものですから、高校生男子の平均身長が170センチにも達した現在、この理屈ががそのまま通用するかは疑わしいと思いませんか?。
なにせ、寸法を決める基準となる身体そのものが大きくなってしまったわけで、尺骨の長さに由来する、1尺=30.3cm 自体が根拠を失っているんですから・・・。

また、日本の住宅の伝統的モジュールである“畳”にしたって、江戸間の1間が6尺なのに対し、京間では6尺3寸ありますから、江戸間の1畳は柱割という理由もあって、2尺9寸×5尺8寸(880mm×1760mm)なのに対し、京間では柱割りでなく畳割で家を建てますから、1畳の寸法も、3尺1寸5分×6尺3寸(955mm×1910mm)となっており、同じ人の身体を基準にするといっても“住まう”ことに何を求めるかで1モジュールの大きさにもずいぶん違いが出てくるのです。(以前、京間に暮す人は狭い江戸間を見下して“田舎間”なんて呼んでたそうですよ)

この新しい VL23に、旧モデルの VL*1シリーズの冬用外張りが流用可能かは知りませんが、前モデルと同様、荷物の多い積雪期に使用する事も視野に入れて設計しているなら、この寸法の基準にいつまでも拘泥するのは如何なものかと思います。
「狭いならプラス1人用を選べ」というのでは軽量化になりませんからね。

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コメント

こんにちは。
このテント(VL-13のほうですが)ずっと気になってました。写真ではいまひとつよくわからなかったフライ短辺下部の張り綱や幻の後室のことなどがはっきり解って、少しすっきりしました。
(気分的にもフライはピンと張っているほうが好きなんで・・)
フライ前室上部の通気孔はうまく機能しそうですか?夏など好天で前室を開けているときには無駄?になってしまいますよね・・・。

改造篇楽しみにしています!

投稿: mobydick67 | 2009年10月29日 (木) 17時14分

mobydick67 さん、ようこそ。

新VLシリーズは、話題になっている割には使っている人は意外と少ないみたいですね。

さっそくですが、前室のところのベンチレターはカウルの縁のところに張りのあるテープ状の素材が使ってあって、開口部が潰れないようになっていますので、特に雨天時などはスリーブ型よりも通気は良いと思います。
それから夏でも寝る時はフライのジッパーを閉めますので、この部分の通気は重要だと思いますよ。

では、改造編を楽しみに?お待ちください。

投稿: 理事長 | 2009年10月29日 (木) 17時42分

>⑧その他、フライ用の収納袋(画像↓中央)が別に付いているのも他のメーカーには無い良いアイデアだと思います。
こんばんは。いつも楽しく読ましてもらっております。
新VLシリーズはアライのダブルウォール占有率の牙城を崩せるのかとても興味があります。見たところ荒削りですが設計的にはよさそうな感じですね。今後に期待したいところです。
ところで一点気になったのですが、私の10年以上前のエアライズにはフライ用の袋が標準装備だったのですが最近のモデルにはついていないのでしょうか?

投稿: 通りすがり | 2009年10月30日 (金) 21時04分

通りすがりさん、ようこそ!
私のエアライズはかなり前のもので本体が今のより黄色っぽいやつですが、そういえば最初はフライ袋が付いてたような気もします・・・が、ずっと本体の袋に一緒に入れててますので無くしちゃったのかな?
トレックライズはそれより少し新しいですが、出入り口のファスナーがバスタブ部分まで回りこんでない頃のモデルです。こちらは確実にフライ用の袋は付属しなかった・・・と思うんですが?
・・・と、いうわけで今後ともよろしく!

投稿: 理事長 | 2009年10月30日 (金) 21時56分

主観がアライよりで書いています、どのメーカーにも可もあり不可もあるのでショップをやっている方なら偏った意見は参考にはなりません、軽さを求めているのですから重量を重くしてまで機能優先ならソロテントの求めている機能を無視してしまう気がしますが。

投稿: copiil | 2013年5月 9日 (木) 20時04分

“copiil "ようこそ。
私の読解力不足でどう答えて良いか分かりませんが、表紙でも表明したようにこのブログは私の主観で書いています。
なるべく中立的な立場で書いているつもりですが、『彼の是は則ち我の非にして、我の是は則ち彼の非なり。我必ずしも聖にあらず、彼必ずしも愚にあらず。相共に賢愚なること鐶(みみがね)の端(はし)なきがごとし』という1400年も前の譬えどおり何処が中立なのかはだれも決められません。
しかし、この製品の想定する一般的な用途とその使用者における製品の評価は、両社の市場でのシェアを見れば明らかですから、その観点から見れば私の判断がそれほど偏っているとは私自身は思っていません。
では今後とも『山道具道楽』をよろしく。

投稿: 理事長 | 2013年5月 9日 (木) 22時03分

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