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2010年2月11日 (木)

シェル出し用ヒートガンを温度調節式に

便利度 :★★★☆☆
工作度 :★★☆☆☆
推薦度 :★★★☆☆
危険度 :★☆☆☆☆
(改造は自己責任で!!!)


最近のスキーブーツやランドーネブーツ(山スキー兼用靴)では、サーモインナーの性能が良くなり、フィッティングも格段に容易になりました。
しかし、サーモインナーが良くなりったとは言え、快適なスキーを楽しむためにブーツのシェルを熱成型加工、いわゆる“シェル出し”を行う必要にせまられることも少なくありません。

特に私の足は舟状骨と小指の付け根の関節が出ているので、足の長さで靴を選ぶとシェル出しをせずにフィットさせる事は困難なのです。

そこで、かつては私もプロショップに依頼してシェルを加工してもらっていたのですが、口では偉そうな事を言いながらいい加減な仕事しかできない「自称スキーブーツ加工のプロ」との対応に辟易した経緯もあり、現在は自作工具と自分なりの方法を使って自宅でシェル出しをしています。

アマチュアの私は自作のピンチクリアのみを使用してシェル出しを行い、プロ用の油圧シリンダーなどの専門工具は使用しませんが、それでも大半の作業をこなせますし、特に舟状骨の当たりなどは油圧シリンダーで内側から押すとブーツのインサイド面が全体に膨らみブーツのコントロール性を損ないますから、こんな場合はピンチクリアでピンポイントの当たり出しをした方がむしろ効果的だと考えられます。

(参考①)  (参考②)  (参考③)  (参考④)  (参考⑤)


実際に自宅で“シェル出し”の作業を行ってみると、一般にはエキスパート・プロの作業だと思われているこの加工も、“フィッティング”や“当たり出し”というレベルのほとんどのケースでは、思ったより容易にできる事がわかりました。
(ただし、ブーツのセンターラインを変えるような大きなシェル加工は、専用の工具が必要な場合もありますのでので、実績のある本物の専業プロに任せたほうが賢明です)

しかし、この作業をアマチュアが失敗なく行うには、シェルを加熱する際の温度管理を正確に行う必要があります。
低温だとシェルが塑性変形しませんし、過熱させてしまうと何万円もするブーツが一瞬にして粗大ゴミと化してしまう危険があるからです。

私は放射温度計(画像↓)でシェルの表面温度を確認しながらヒートガンで加熱したり、温度の調節できるヒートガンを使うなど試行錯誤しながら、表面温度を90℃台前半に保ちながら作業する方法にたどり着きました。

Hgun_1
(非接触で対象の表面温度が測定可能な放射温度計)

当初使っていたヒートガンは国産専業メーカーの製品で風量も十分なのですが、温度調節ができずそのままだと400℃以上の温風が出て油断するとシェルをダメにしてしまいますし、その後導入した温度調節式のヒートガンは安物で温度も安定せず、風量もイマイチ少なく使い勝手が良くありませんでした。

Hgun_3
(㊧安モノの温度調節式ヒートガンと、㊨通常のヒートガン)

そこで、前者の高品質で風量も多いものの温度調節ができないヒートガンを、安定した温度調節のできるものに改造する事にしました。
ご覧の通りかなり大袈裟で、これだったら高品質の温度調節式のヒートガンを新しく買った方が賢明なこととは承知していますが、ヒートガンを何個も持っていてもしょうがないですし、温度の安定性に関してはこの方法がベストだろうと考えて改造に踏み切りました。

温度調節には手持ちのスライダック(電圧調節式トランス)を利用して、ヒーターにかかる電圧を調節して温風の温度を可変式にするというも単純な仕組みです。
しかし、ヒートガンの電源プラグにかかる電圧を可変式にしただけではブロアー・モーターの回転数まで変わってしまい、本体の過熱などの問題が生じてしまいます。

そこで、本体を分解してスイッチより先の部分でヒーターに入る回路だけを一旦外に取り出して、そこにスライダックを中継させてヒーターにかかる電圧のみを調節できるようにしました。
こうすれば、スイッチの切り替え機能も生きますので、ブロアーが止まった状態でヒーターのみ通電するという最悪の状態を避ける事ができますし、ブロアーの風量も一定にすることができます。

Hgun_5  Hgun_7

なお、回路的には3線式でも可能ですが、回路を論理的に単純化するため4線形式でスライダックに結線しました。

また、温度調節の必要の無い時はヒーター回路を外に取り出した部分の2個の♂♀コネクター同士を結合しておけば改造前の状態で使用可能なようにしておきました。(画像↓)

Hgun_6

電圧は一定でも雰囲気温度によって温風の温度は変わりますので、吹き出し口の温度ではなく、その時の気温から何度上昇するかを測定しました。

2個のK型熱電対をヒートガンの吸気部分と噴出し部に配置して温度を測定し、その差を紙で自作した目盛りに書き込みました。
噴出し口から5センチくらいの位置で110℃~130℃位を目安に、スライダックを調節し、作業に当たっては放射温度計でシェル表面の温度が90℃+α位になっていることを確認してから成型作業に進めば良いわけです。

Hgun
(中央上が2つの温度センサーの差も測定できる熱伝対式温度計)

慣れてしまえば必要無いかもしれませんが、初めのうちは念のため放射温度計でシェルの表面温度をチェックしながら作業を行ったほうが安心です。

さて、正直な話をすると・・・、自分でもいささか大袈裟すぎて、シェル出しだけのためにここまでするか?・・・、という感じですが、実はこの工作を実行した目的はもう一つあるのです。
それは、この改造ヒートガンの噴出し口に先端を加工した円筒を連結し、サーモインナー用のヒートライザーを作る事です。
このヒートガンは風量も多く、円筒の噴出し部に温度センサーを置いてスライダックで温度管理を行えば、自宅でサーモインナーを焼く事もより簡単となるでしょう。

現在製作中なので、これについてもテストが済み次第レポートしてみたいと思います。


【おまけ】
ついでに、家庭用のヘア・ドライヤーの温風が何度くらいなのか確認するために1000Wのヘア・ドライヤーの噴出し口から10センチくらいの位置で温度測定を行ってみました。
私の測定結果では、ヘア・ドライヤーは吸気温を50℃~程度暖める能力はあるようです。
通常の室温だと吹き出し口直近では100℃位あったとしても、実用上はせいぜい70℃~80℃位の温風ということになりますから、これでは衣類乾燥機で成型が可能と表示のある低温度成型タイプのサーモインナーには使えても、シェル出しに使用するにはやや能力不足で、可能だけど非能率的!といった印象です。(本来がヘアドライヤーですから髪を傷めにくい温度設定も当然といえば当然ですが・・・)

また、K型熱伝対式の温度計は上の画像にあるような専用のものでなく、“秋月電子”などで扱っている安価なマルチテスター(画像↓)に付属のものでも十分実用可能です。

Hgun_4
(右端が熱伝対センサー)

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コメント

なかなかよく考えられたシェル出し手順で、感心しました。
マグネットの活用は、グッドアイデアですね。
今度シェル出しが必要になった時に、アイデアを借用させていただこうと思います。

ヘアドライヤーですが、私は普通の家庭用ヘアドライヤー(National EH5215 1200W)を使用してつま先出しをしています。
コツは、ガムテープを貼って吸気通路を2/3~半分近い面積に制限すること。
これによってドライヤー内臓の過昇温防止用の感熱スイッチが作動する直前の温度に保てば、概ね適温になっているようです。
放射温度計を持っていないので温度を測ったことはありませんが、爪で軽く押すと傷がつく程度までシェルが軟化し、シェル出しも可能ですし、ブーツをお釈迦にしたこともありません。

ドライヤーは、風量(=時間がかかること)を気にしなければ、1000Wでもいけるかもしれません。

ご参考まで。

投稿: カズ | 2010年11月13日 (土) 23時29分

カズさん、ようこそ。

普通のヘアドライヤーでもこうすれば温度を上げられますね。
120℃位までなら温度ヒューズも作動しないでしょうし、十分実用になりそうですが、吹き出し口周辺のプラスチック部分がどれだけ頑張ってくれるかは気がかりですね。

それから、私は前回の記事以降にトライアックを使用したヒートガン用の温度調節器を製作しましたので近日記事にしたいと思います。

では、今後とも『山道具道楽』をよろしく!

投稿: 理事長 | 2010年11月14日 (日) 10時57分

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