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2010年4月

2010年4月24日 (土)

110型カートリッジ用パワーブースターの試作 ②(挫折編)

便利度 :★★★☆☆
工作度 :★★★☆☆
推薦度 :★☆☆☆☆
危険度 :★★☆☆☆


“110型カートリッジ用パワーブースターの試作 ①(構想編)”からの続きです。)

さて、試作1号機は下部の銅版が結構重く嵩張るので幅を短く切り、さらに熱伝導率を上げるためヒートパイプをハンダ付けする事にしました。

Powerb_9   Pb2_2
(㊧改造前、㊨改造後の状態)

ハンダ付けに当たっては対象がヒートパイプなので当然熱が逃げやすく、半田鏝は熱量の大きなものが必要です。
私は300W の鏝を使いましたが、最低100W位あったほうがハンダの流れが良いと思います。

熱吸収部のフィンは旋盤で削り出し、ヒートパイプの入る穴はリーマで正確に仕上げました。
ヒートパイプとの接合は “固まるタイプの放熱用シリコン”を塗って嵌め込み、下部を油圧プライヤーで6角形に軽くカシメました。(画像↓)

Pb2_4

さあ、この試作完成型を早速テストしてみましょう。

通常のストーブで110型カートリッジを使い、炎に熱吸収部に近づけると素早く熱が伝達され熱放出部が効果的にカートリッジを暖めてくれました。
これで一応“110型カートリッジ用のパワーブースター”は完成です。
ヒートパイプは手で曲げられますので、使用するバーナーやクッカーの形状に合わせて熱吸収部を炎の近くのちょうど良い位置に持ってくれば完璧ですね。


さて、次に主要目的であったJETBOILで試してみる事にしました。(画像↓)
・・・・・しかし。

Pb2
(排気部にフィンを接触させても効果は十分ではありませんでした)

「あれ???」
カートリッジまで十分熱が伝わってきません。

しかたなく熱吸収部を排気部の穴に接触させてみましたが、それでも十分に熱がカートリッジに伝わっていないのです。
時間が経って熱吸収部が温まってくると徐々に熱は伝わってきますが、それではタイムラグがありすぎて実用的ではありませんし、伝わる熱の量も十分ではありません。

「ガーン!!」
完全に失敗です。


JETBOILは熱効率が高くあっという間にお湯が沸きますが、これはバーナーの熱を熱交換部を通じ高効率でコンパニオン・カップ内の水に伝えるためで、したがって熱を奪われた排気の温度は予想よりはるかに低かったのです。
ヒートパイプの熱伝達量は両端の温度差に依存するそうなので、熱吸収部がこの程度の温度だと効率が極めて悪くなると言う事なのでしょう?

これはある程度予想していましたので、熱吸収部の寸法を大きくしフィンも多目にしたつもりだったのですが・・・・、ここまで効果が出ないのはまったく想定外でした。

そういえば、排気部のすぐ上にネオプレーン製のコジーがあっても焦げないのですから、この結果も当然と考えなければいけなかったのです。
完全に私の読み違いです。
いや~、これがJETBOILの熱効率の凄さなんですね、恐れ入りました!

しかし、これぐらいで諦めていたら「アマチュア自作マニアの名が廃る!」、と言うものです。
早速リターンマッチを始めることにしました。

(“110型カートリッジ用パワーブースターの試作 ③(リベンジ開始編)”に続く)



【余談ですが・・・】

ところで、ガスバーナーのカートリッジ部に被せるモンベル製の“ソック(orチューブ)・プロテクター”なる道具があり、私も使ってますが・・・。

使ってる皆さんはどんな効果を期待して使ってますか?
モンベルのカタログの説明ではたしか「・・・雪の上に直接置いても凍りつかず、ガスの消費量を抑えます・・・」みたいな事が書いてありましたし、同様な他社製品の以前の能書きでは、「保温する事によって液化ガスの冷却を防ぎ・・・云々」と説明されていた記憶があるんですが・・・。

あれって本当にそんな効果があるんですかね?
また、ガスの消費量を抑えられるんでしょうか?
特に気温がガスの沸点よりかなり高い時は、???だと感じるんですけど、専門家でないのでよく分からないんですが、本当のところはどうなんでしょう?

通常、ストーブに点火前は( カートリッジ内の液化ガスの温度 ≒ 雰囲気温度 )であり、燃焼を始めた以降は液化ガスが気化することで潜熱を吸収して自らを冷やし続けちゃう訳で、断熱状態と仮定するなら燃焼中は( カートリッジ内の液化ガス温度 < 雰囲気温度 )の差が逓増し、絶対に不等号が逆転する事は無いはずです。

それで、液化ガスの温度値が漸減し、その気化できる最低の温度に近づくにつれ、気化するガスの量が減って火力が落ちちゃうんですよね。

そんな時、もし( カートリッジ内の液化ガス温度 < 雰囲気温度 )で、気温がガスの気化温度より高ければ、断熱材でカバーしないほうが、カートリッジ表面から熱を取り入れて液温を高め、ガスの気化を促進する働きをしてくれるんじゃあないかとも思うんですが?

それなのに、カートリッジの外側を断熱素材で覆ってしまうと、カートリッジの中の液温は気化可能な限界まで温度が下がり続け、より短時間で気化できない温度になっちゃうんじゃあないでしょうか?

ビーカーの中ではすぐに蒸発してしまう液化窒素が、断熱されたジュワー瓶の中では長時間気化せずに液体でいられるのと同じ原理で、場合によっては断熱材で覆う事がかえって逆効果ってことも考えられます。

もちろんバーナーを直接雪の上に置く場合ならガスを冷やさない役目は果たすと思うんですが、厳冬期に直接雪の上にカートリッジを置いて調理をするバカも滅多に居ませんよね?

もちろんパワーブースターを使う場合には、熱を逃がさず効率よくガスの加温に使えるようこの手の断熱素材でカートリッジをカバーしてしまうというのも理に適った事だと思いますが、それ以外はむしろ火力安定の効果が期待できない場合も多いんじゃあないでしょうか。

特に最近の寒冷地用ガスは、沸点の低いイソブタン(-12℃)やプロパン(-42℃)などが混入され、かなり低い温度でも気化してくれる訳ですから、少なくてもそれ以下の温度の時しかこの手のカートリッジの保温カバーは意味が無いように思うんですけど・・・。

う~ん・・・、皆さんはどうお考えでしょうか???

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2010年4月19日 (月)

110型カートリッジ用パワーブースターの試作 ①(構想編)

便利度 :★★★☆☆
工作度 :★★★☆☆
推薦度 :★☆☆☆☆
危険度 :★★☆☆☆



最近はガスカートリッジの寒冷時性能が上がり、厳冬期でも短期の山行ではガソリンストーブに代わりガスストーブが主役になってきました。

Powerb_6
(これらのカートリッジなら冬でも使用可能)

以前は寒冷地用カートリッジといっても、冬に連続使用すると気化熱によってガスが冷え極端に火力が低下してしまい、それを防ぐためは炎の熱をカートリッジに回帰させてカートリッジを加温するためのパワー・ブースター(パワー・チャージャー)というオプションを使用しなければなりませんでした。
しかし、冒頭に述べたように近年はライナーを内装した物などカートリッジの寒冷時性能が向上したせいか、以前冬のガスストーブの必需品(?)だったパワー・ブースターもあまり売れていないようで、PRIMUSなどは製品のラインナップから外してしまったようです。

(山用ではありませんが、500型カートリッジを正立で使う大出力のキャンプ用ストーブなどはガスの気化量が多いので冷えやすく、また安価なノーマルカートリッジを使用する場合は夏でもパワー・ブースターを使わないと出力が安定しません)

Powerb_2  Powerb
(廃番となったPRIMUS製パワーブースター、画像は改造したもの)

とは言え、厳冬期に分離型でないガスストーブを使うとなると、やはりパワーブースターを使った方が格段に燃焼が安定します。
私は現在、すでに廃番になってしまったプリムスのパワーブースター(500型用を改造したもの)を所有していますが、この製品はEPIの同等品より軽く、使い勝手も良いので是非復活を望みたい製品です。

しかし、この製品も250型と500型カートリッジには使用できるのですが、残念ながら愛用の“JETBOIL”の110型カートリッジには直径の違い(画像↓)から使用できないのです。

Pb2_3
(㊧250型、㊨110型)

しかも、110型カートリッジ用のパワーブースターはメーカー・オプションとしては製造も市販もされていないので、欲しければ自分で250用を改造するか完全に自作するしか方法はありません。

そこで、当初EPIストーブのオプションとして現在も市販されているパワー・ブースターを改造しようと考えましたが、値段が4000円以上とお遊びの材料としてはやや高価だったので、市販品の改造は中止し、全部を自作する事にしました。

さて、自作にあたっては、まずメインのパーツとなる“ヒートパイプ”を入手しなければなりません。
ヒートパイプとは、中空の銅管の中で動作液が相転移する時の潜熱の吸収・放出を熱伝達に利用したもので、同じ直径のムク材の棒の数分の一の重さで、数十倍以上の熱移動能力を持っており、NASAが宇宙船のために開発したデバイスだとか言う話ですが・・・、真偽の程はわかりませんが、とにかくこのような用途には最適の素材です。

Powerb_3
(PRIMUSのパワーブースターも細いヒートパイを内蔵している)

このように四半世紀前はハイテク技術だったヒートパイプですが、幸いな事に現在はコンピューターのCPUの冷却などの目的で自作PCパーツ店などで比較的容易に入手が可能となりました。

Powerb_4
(自作PC用パーツとして入手可能なヒートパイプ)

工作は画像(↓)をご覧になればお判りになるように、熱吸収部に2000系アルミを旋盤で削り出したフィンを嵌め込み、熱放出部は銅版を110型カートリッジのRに合わせて曲げ、ヒートパイプ嵌合部のパーツを銀ロウ付けしました。
また、熱放出部の銅版はショックコードでカートリッジに密着するように固定される構造です。

Powerb_7
(自作パワーブースター・試作1号機の全体像)


その後、熱放出部の銅版が大きくて重いので少し小さめに改造を行うことにしましたが・・・。
 (・・・以下、続く)

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2010年4月15日 (木)

推薦!秀山荘の沢登りザック/“ウォータークライム Ⅱ”

便利度 :★★★★★
工作度 :☆☆☆☆☆
推薦度 :★★★★★
危険度 :☆☆☆☆☆
(製品価格を高いと見るか安いと見るかは・・・、使ってみれば判ります!)


まもなく“沢のぼり”シーズンの開幕です!

で・・・、今更紹介するのもなんですが、私は現在沢登りで使用するザックとして、秀山荘の“ウォータークライム Ⅱ”と“ウォータークライム Ⅰ.ⅴ”を使用しています。

Wcsr  Wc6  Wc5

何れも容量の違いだけで大きな差はありませんが、泊りを要する沢の場合に私が多用しているのが“ウォータークライム Ⅱ”という60ℓのザックです。
購入して数年以上経ちますが、近年はハードな沢には行きませんの痛みは少なく、まだまだ現役で活躍しています。

最近は他社でも沢登り用ザックをラインナップに加えているようですが、この“ウォータークライム ”シリーズは沢登り用ザックの先駆者としてその存在感を際立たせている製品で、自信を持ってお薦めできますので、今回あらためて御紹介することにした次第です。

また、このザックに関心はあっても、欧米メーカーと比較するとシンプルな造りで外見も地味なのに価格は輸入品並みとあって、購入を躊躇している“沢屋”さんも多いと思いますが、この記事はそんな方にとっては『買っちゃいましょうよ~♪』という悪魔の囁きともなりますので、要注意です(笑)。


さて、沢登用ザックと言うと「防水性」が問題にされるとお思いかもしれませんが、この“ウォータークライム ”はその逆の発想、つまり防水よりもザックの中に入った水を如何に速やかに排水するかを重視した構造になっているのです。

Wc2c  Wc2
(泳ぎやシャワークライムには最適なザックです)

もちろん濡れては困る物はザックの内側にある防水袋(付属)に入れて浸水を防いでいるのですが、結果としてこの方式のほうが荷物を濡らさずに済むことになるようです。

●ではこのザックの特長などについて箇条書きにして見ましょう。

①ザックの底に水抜きのグロメット(画像↓㊧)とスリット(同、㊨)が設けられている。

Wcb Wcb_8
(底は内側のメッシュ地とのニ重構造でスリットから物が落ちることは無い)

②雨蓋の裏の物入れもメッシュで水切りが良い。(画像↓)

Wcb_4

③背面のクッションはモノフィラメントを3次元に編んだ特殊な素材をメッシュ地で覆った物で、スポンジのように吸水せず、あっという間に乾燥する。(画像↓)

Wcb_9

④ショルダーストラップは同様に水切れの良い素材で、こちらも水を含みにくい。

⑤同様な素材のウエスト(ヒップ)ベルトは嵩張らないシンプルなもので、簡単に取り外しができる構造となっている。
(ウエストベルトがあるとハーネス使用の邪魔になったり、ウエストベルトの荷重でハーネスがずり下がったりと不都合な場面も多いので、私は敢えて取り外して使用することもあります)

Wcb_6

⑥60ℓクラスのザックなのにハードフレームを内蔵していないが、こんな割り切りもこのザックの特徴だ。
大体、20k位までの重さなら肩で背負えるのでフレームが絶対必要という訳ではないし、沢登りの場合はこれで必要にして十分だと思われる。
また、シンプルな造りなので容量60ℓで重さ1.8キロ弱とかなり軽量な部類だ。

⑦ボトムだけでなく全体に丈夫な生地を使っていて耐久性は高そうだ。
吊り上げや藪漕ぎなど乱暴な使い方をしたが、使用頻度はそれほど多くないので現在まで破れて穴が開いたのは底の一箇所のみだ。
ただ、残念なのはテープの素材が悪いのか、経年変化でテープが硬くなってしまい、バックルでの長さの調整がやり難くなってしまった。
現在の製品も同様の素材かは不明だが、「たかがテープ」と考えず、良質の素材を使ってもらいたかった。

Wcb_2
(底の生地は丈夫で、ツギ当てで補修したのは1箇所のみ)

⑧なお、アックス(ハンマー)ループも付いているが、この部分は細いショックコードとコードロックだけと頼り無い構造なので、使用するならユーザーで少々手を加える必要があるだろう。

Wcb_3
(私は15㎜テープに変更した)

★以上のように沢登りに特化したザックなので、これが必要なユーザーは限られるとは思いますが、目的さえ合致していれば最高のパートナーとなってくれるものと確信しています。


【余談ですが・・・】 -バックパック雑感-

唐突ですが・・・、ここ20年ほどの傾向として、バックパックの背面システムがやたらと複雑になりすぎている気がしませんか?。(私としては“バックパック”より”ザック”と呼んだほうがしっくりくる年齢なので、以下“ザック”と表記します)

荷重を腰で受け止めるという仕組み自体は、70年代、アメリカのバックパッキングムーブメントの中で急速に進化したフレームパックで既に完成されていたのですが、フレームパックの流行が去った後も、その方向性がそのままソフトパックに移植され、徐々に熟成されたシステムとして発達してきたということなのでしょう?。

今や、中型以上のザックではアルミのインナーフレームは当たり前で、複雑なストラップシステムや、かなり大袈裟なヒップベルトが装備されていないと“売れる商品”にはならないというのが現在の登山用品市場の傾向のようです。
さらに、小・中型ザックの中には、私の目から見れば、容量やタイプから明らかに不要と思われるフレームやオーバークォリティ-な背面システムを備えた製品も少なくない気がします。
特に一部の小型パックには、結構本格的な取り外せないヒップベルトが付いていたりしますが、ほとんどの場合あんなものは不要で、必要に応じて振れ止め用のテープベルト程度があればそれで十分なはずです。

また、私たちユーザーのほうも、たかだか十数キロの荷物を担ぐためのザックについて、その背面システムの薀蓄を語るっていうのも何だかオマヌケな感じがしませんか?


かく言う私も、大昔は“片桐”の特注キスリングや “HOPE” のアルミ背負子(知ってる人はかなりの年齢・笑)で、文句も言わず平気で50キロの荷を肩で背負っていたにもかかわらず、その後 フレームパックが流行るとそのブームに流され、JANSPORTS のメカニカルなフレームパックを礼賛したと思えば、結局山岳地形では使い難かったフレームパックが市場から消えて暫くすると、今度は金回りが良くなったのをいい事に、海外で購入した某D社の高級(?)ザックを自慢げに背負い「この絶妙な背面システムが・・・云々」などと薀蓄を語るような時期もあったのですから、私という人間もずいぶんいい加減なものです。

また、ザックを評価するに当たって「・・・ショップで背負ってみて、包み込まれるような絶妙なフィット感に感動し、思わず購入した・・・。」などという表現をウエブ上で良く見かけますが(私も時々そんな事を書きますがね・・・笑)、それらは大体が、一流ブランドの持つハロー効果や、ある種の思い込みによる過大評価の産物だと思います。
なぜなら、多くのザックのアルミフレームは、購入したユーザーが自分の体系に合わせてさらに強く曲げてフィットさせる事を前提に、最小限のS字カーブの状態で出荷されているわけですから、日本人の標準体型ではデフォルト状態で”絶妙”と表現されるようなフィット感が出ることは九分九厘無いはずだからです。
自分の選んだ高価な一流ブランドのザックを、過大評価したい気持ちは分かりますが、この辺の表現には抑制を効かせる必要があると、私自身も少々反省しています。

さて、、重い荷を長期間担ぐのでしたら、凝った背面システムや大袈裟なヒップベルトも決してオーバークォリティーとは言えないのかもしれませんが、最近は装備の軽量化も進み、私の場合(体力の低下を考慮して?)、通常のテント2~3泊の荷物の重さは冬季でも飲料水込みでも20キロ台前半が上限となりますから、この位の荷物をゆとりを持って収納できる大き目のザックを選ぼうとすると、市場にある殆どの製品は私にとって過剰品質の感が否めません。
つまり、店頭に並ぶ大方のバックパックは、私の目には必要の無い機能と重量を、余計な出費を伴って背負わされるような構造のモノばかりのように見えるのです。

そこで私は、50リットルに満たないようなサックでは、可能ならフレームを抜いてしまったり、嵩張るヒップベルトを取り外し、振れ止め程度のテープのストラップに交換したりする改造をしている場合も多いのですが・・・、だったら初めからもう少しシンプルな構造の中・大型パックがあれば好いと常々思っています。

また最近は、歩行重視のモデルだけでなく、一見アルパインクライミングを意識したかに見える外見を持つザックの中にも、取り外せない大袈裟すぎるヒップベルト装備したものも少なくないような気がします。
好ましい例として、カナダA社の“Bora”シリーズと”Kamsin”シーリズのように、はっきり用途を区別し、歩行用ザックには取り外す事を前提としないオーバーサイズのしっかりしたヒップベルトを装備している一方、アルパイン用では大型のザックであっても、ヒップベルトやフレームをシンプルかつリムーバブルなものにしているという例もあるのですが・・・、残念ながら結構有名なメーカーでも中途半端な設計のザックを作っている例も少なくありません。

上の記事にも書きましたが、沢やアルパインの場合は大袈裟なヒップベルトではかえって邪魔になりますし、ハーネスのギアループにガチャを吊るしている場合など、ヒップベルトがハーネスをズリ下げてしまって不快だったりと、場合によってはヒップベルトなど無い方が良い場合も多いのです。

アルパイン用でも、BCまでやアプローチで重荷を担ぐ必要がある場合もありますから、大容量のザックにはそれなりのヒップベルトが必要かもしれません。
しかし、本チャンのピッチになってからヒップベルトが邪魔になっても、それを捨てちゃう訳にはいかないので、あんまり大きなヒップベルトだとその分必要も無いのに余計な荷物を担ぐ事を強いられちゃいわけです。
というわけで、現在はアルパインクライミングなどとは無縁な私ですが、強いて後進の登山者ために言わせてもらえば、最小限の大きさで、しかも簡単に取り外しができるのヒップベルトを装備した高品質の中・大型ザックがあればベストだと思うわけです。

また、私が高く評価しているヒップベルトとしては、後期の“DANA DESIGN”の両腰骨部分にプラスチックのアーチのある軽量・シンプルかつ、シッカリ腰で加重を受け止めてくれるモノがありましたが、あの形式をどこかのメーカーが復活させてくれたら理想のザックができるような気がするのですが・・・・。

閑話休題・・・

さて、このような複雑で大袈裟な背面システムがザックのスタンダードとなってしまった一方で、その反動も現われ始めています。

まだマイナーではありますが、UL系バックパックというカテゴリーで、背面システムを含み全体がかなりシンプルで軽量な設計になっている製品も市場に出現しだしたのです。
まあ、これも“UL”という既成の登山形態に対するカウンターカルチャーの露頭の一つなのかもしれませんが、私としてもたいへん興味のある現象だと思っています。

まあ、山道具マニアで、以前は「荷は腰で背負うんだ!」などと吹聴し、複雑な背面システムの薀蓄を語っていた人(≒私?)に限って、そんな新しいシンプルなULバックパックに飛びつくんですから・・・、不定見な道具マニアぶりには我ながら笑っちゃいますけどね。

・・・と、いうわけで、このようなパックパックの2極分化も悪くないのですが、いわゆる「普通のザック」でも高品質かつシンプルな製品が出てくると好いな・・・、などと考える今日この頃です。



(おまけ)

秀山荘のザックの話を書いていたら、ついでに同社の“ザ・合宿”なんていうお茶目な名前の超巨大ザックを後輩が使っていた事や、LOWEALPINEの“カンガ・ヒマール(だったかな?)”なんていう、“ザ・合宿”に負けず劣らず巨大なザックがあった事を、突然思い出しました・・・。
あと・・・、以前シュイナードドラゴンなんていうブランドのザック(クロスター産業がやってたのかな?)もあって、これにもかなり大型のザックがあったし、このメーカーの一連のザックが現代の背面システムの一つの原型になったみたいな気がするなぁ・・・、などとも考えちゃいました。

そう言えば重いキスリングを肩だけで背負っていた当時は“ザック麻痺”という山屋特有のかなり危険な傷害があった事も突然思い出しましたが・・・、これを知ってる人もかなりの年齢ですね!。。

お恥ずかしいかぎりですが・・・、歳をとるとノスタルジー話は尽きませんので、この辺でお終いにします。
お粗末でした!

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2010年4月 8日 (木)

“Dynafit-TLT”ビンディングの取り付け(補足情報①)

便利度 :★★★★★
工作度 :★★☆☆☆
推薦度 :★★★★☆
危険度 :★★★☆☆

(あくまでも自己責任で!失敗しても責任は持てません)

一昨年の記事『“Dynafit-TLT”ビンディングを自分で取り付けよう、 、 、 、』 で、数あるビンディングの内でも取り付け調整が少々難しい部類に入る、“Dynafit-TLT”ビンディングを自分で、しかも自宅で取り付ける方法について御紹介しました。

この記事について、非公開で「そんなに簡単ではなかった」との御意見(苦情?)を頂戴した事もあり、TLTを取り付ける際に失敗しないための注意点や、ヒントについて、Q&A形式でお話しをしたいと思います。
また、この内容はDIAMIRやNAXOなどの他の山スキー用のビンディングにも応用できますので参考になれば幸いです。 

Q1
【トーピースが曲がって付いてしまい、センターが合わないのですが?】
A1

以前の記事にあるようにビス1本1本を丁寧に調節をしてみてください。
また、例えばトーピース5本の内3本だったらセンターが出るのでしたら、まず3本をガッチリ固定し、後日ビスの接着剤が固まった時点での残りの2本を締めてみてください。

(トーピース前端のビスは以前のモデルではレバーの穴が小さく締め難いため、改造型のポジドライバーを使用するのがベターでしたが、09-10のマイナーチェンジモデルからはレバーの穴が広がり通常のポジドライバーでも締めやすく改良されました)

これはTLTだけでなく、DIAMIR等のビンディング取り付けにも言える事ですが、センターが出ない原因は、穴が正確な位置にあいていないからです。
テレマークのビンディングなら手抜きをしてセンターが狂っても大きな問題は起こらないのですが、このTLTビンディングではより正確な作業が要求されると考え、慎重に作業を行ってください。

Q2

【センターの取り付け誤差の許容範囲はどの位ですか?】
A2

誤差ゼロで完全にセンターが合っているのが理想なのですが、かと言って完璧にこだわる事も無用です。
必ず多少はズレると割り切っていたほうが気楽に作業ができるでしょう。

例えばTLTビンディングを取り付けたスキーでも、GARMONT のブーツでセンターが出ていたのにBDのブーツに換えたら同じスキーなのにセンターが合わなかったという事もありますから、それ程神経質にならなくても結構です。
下の画像は靴と板が離れているので判りにくいのですが約1ミリ位センターがズレています。
これが大体3ミリ位の範囲でしたら問題は無いと思って良いでしょう。

Hline

Q3
【3ミリもずれていて滑走時に問題は無いのですか?】
A3、

私の経験ですが・・・、実は初めてTLTを取り付けた時、不慣れだったせいか、どう調整しても3ミリほどセンターが狂ってしまいました。
使用するまで不安でしたが、このスキーでセンターがズレていた事が原因で誤解放が起こったりした事は(たぶん?)ありません。
装着時にヒールピースのピンとブーツのビブラムソールが当たり、気になるようならソールの角をカッターで削ってしまっても良いでしょう。

私も最近はTLTの取り付けに慣れてきたので、取り付け後の微調節無しでもほぼ許容範囲内に納まり、簡単な調節で誤差ゼロにできるようになりましたが、最初の1~2回はセンター合わせに苦労しました。


Q4
【センターのズレが少なくなるためのコツはありますか?】
A4
はい、基本は正確な位置にドリルができるか、と言う事に尽きます。
あらためて、初めての方が失敗せずに取り付けるためのコツを箇条書きで御紹介します。

①できたら不要なスキー板で予備実験をしましょう。(スキーが無ければ2×4材等の板でも良いがコツは掴み難い)

②紙ゲージを使うか、紙ゲージが無ければ、以前の記事で紹介した方法で作った紙ゲージを基に透明なポリプロピレン板で自作のゲージ(画像↓㊨)を作っておくと良いでしょう。

Dpg1  Dpg
(㊧紙ゲージの使用、と㊨DIAMIRとTLT用の自作のPP板ゲージ)

③罫書き針でビスの位置をスキー板の表面にマークしたら、センターポンチを軽く打って、もう一度紙ゲージ等を当て、位置の再確認をしましょう。(この段階で位置がズレていたら再度修正ポンチを打っておきます)
位置をチエェックしてOKだったら、再度強めにポンチを打って、ドリルの先端が暴れないようにしておきます。

③メタルジグを使用しないアマチュアの場合は、必ず2.0~2.5ミリくらいの細目のパイロットドリルで予備穴を明けてから3.5~3.8ミリの本ドリルでの穴あけをしたほうが安全です。
なお、ドリルは普段鉄工用に使っている古いものではなく、良く切れる新品だとポンチマークから逃げてしまう事もありません。
ドリルにはガムテープなどで代用せず、パイプを切っただけの自作でも構いませんので必ずシッカリしたストッパーを取り付けましょう。
私も大昔に、あわや!という経験がありますが、メタルを貫通した弾みでガムテープのストッパーが滑ってソールまで貫通してしまう危険があります。

Tap_4
(ドリルには必ず確実なストッパーを付けよう!)

特にスキーにメタルシートが使用してある場合は、いきなり本ドリルで穴あけをするとドリルの先端が暴れて位置が狂うので要注意!。(例えば、ほとんどのK2の山スキー用の板は硬いチタナルアルミのメタルシートを使用してありますが、このようなメタルのある板の場合、初心者は1.5→2.5→3.8ミリと3段階に穴あけをしても良いでしょう)

Tapb_8
(㊧がパイプストッパー付きΦ2.5mm、㊥㊨はストッパー付きの3.5~3.8mmドリル)

穴はできるだけ正確に垂直に明けるますが、不安ならボール盤を使うのも一法です。

正確にドリルができればセンターの位置が大きくズレることはありません
大きくセンターがズレるのはドリルの穴の位置が正確でないからで、その原因のほとんどが穴あけ時にドリルの先端がポンチマークから逃げたり、暴れたりするからです。
メタルジグを持たないアマチュアが正確にドリルするためには、とにかく慎重に正確に作業を行うかしかありません。

⑤慣れればオート・ポンチも便利ですが、打った瞬間にポイントがジャンプしてマークからズレる事がありますから、慣れない方は通常のポンチとハンマーを使用したほうが無難です。

Dpg2_2
(普通のセンター・ポンチが無難)



以上の注意を守れば、ポジ・ドライバー以外はホームセンターで売っている汎用の工具を使って、誰でも自宅でビンディングの取り付けが可能ですが・・・、専門工具を必要とするものの、TLTビンディングをメタルジグを使わず、さらに完璧に取り付ける方法もあります。

それは、正確な垂直にタッピングを行うということですが、この件については長くなりますので、後日記事にまとめようと思います。 (以下、続く)

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2010年4月 1日 (木)

“トレッキングポール”の小改良

便利度 :★★★★★
工作度 :★☆☆☆☆
推薦度 :★★★★★
危険度 :☆☆☆☆☆


トレッキングポールをザックに取り付けなければならない場面はままありますよね。

特に“山ボード”の場合は、登りには役に立つポールも滑降時にはスノーシューと共にザックにしっかりと固定しなければなりません。
滑降の途中でスノーシューやトレッキングポールを紛失したという、泣くに泣けない話も耳にしますし、紛失しないまでもザックでブラブラ不安定なのもあまり快適ではありませんよね。

特にトレッキングポールはグリップの方をザックのサイドポケットに差し込んで、サイドのコンプレッションストラップで締めただけでも普通はOK なのですが、派手な転倒が予想される(?)山ボードなどの場合はこれだけでは安心できません。
最悪の場合でもザックから外れないようグリップのストラップにカラビナを掛けてザックに留めて置くのも一つの方法ですが、ストラップの長さの分だけザックの下に突き出したり、ブラブラして不安定になってしまうことも予想されます。

そこで私は、グリップの頭にドリルでΦ5mm程の穴を明け、そこに細引きの小さな輪を取り付けました。(画像↓)

Poleb 

この輪を使ってザックに固定すれば絶対に紛失する事はありませんし、あまりブラブラせずに安定して固定する事ができます。

Polec   Pole2   Pole3

また、トレッキングポールをツェルトやタープの支柱にする時にも、この輪を使えば簡単・便利に張り綱の支点を得ることができるでしょう。

なお、今回の改造の例にしたBDのトレッキングポールはグリップ部分はソフトなスポンジ、グリップエンドは硬質プラスチック製という構造なのでこの改造には最適でした。

また、このポールは、本来トレッキング用なのですがメインのグリップ下にあるサブグリップも使いやすく、軽量なのでパウダーバスケット(画像↓)に交換すれば冬季の山ボード用のスノーシュー・ポールとしても優れた能力を発揮します。

Polea

ただ一つ問題なのは、このトレッキングポールは基本的に無雪期用として設計されているため、素手で握り易いようにスポンジ素材のグリップとソフトな素材のストラップを採用していることです。
残雪期ならこれでも良いのでしょうが、氷点下になる厳冬期に使用したらスポンジ素材が災いしてグリップに雪が付着して凍り付き、吸水性のあるストラップもカチコチに凍ってしまいました。

Pole1
(これはまだ凍りついていない時の画像かな?笑)

これは少々困った問題なので、早速対応を行いましたが、この対策については、機会をあらためて紹介したいと思います。

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