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2010年6月24日 (木)

“Dynafit-TLT”ビンディングの取り付け(補足情報②)

便利度 :★★★★★
工作度 :★★☆☆☆
推薦度 :★★★★☆
危険度 :★★★☆☆
(あくまでも自己責任で!失敗しても責任は持てません)


私の失念により公開が遅くなってしまいましたが・・・、 『“Dynafit-TLT”ビンディングの取り付け(補足情報①)』からの続きです。


さて、“Dynafit-TLT”のような山スキー用ビンディングの取り付けにあたっては、ショップで専用タルジグを使ってドリリングしても100パーセント誤差ゼロの正確なセンターが出るわけではありません。
これはピッチの荒い(リード角の大きな)タッピングビスだと、擂動運動(≒味噌擂り運動)しながら対象に進入していくという性質が顕著となるため、完全には避けられない現象なのです。

Jig
(プロショップで使用するメタル・ジグ)

また、ドリル穴にビス先端を当てるとネジ山のリード角と水平なドリル穴の周縁との関係でやや曲がった状態で安定しますから、そのまま漫然とビスを締め込むと回転軸がやや傾いて入ってしまうのです。
そして、ピッチの大きい木ネジ特有の擂動運動と相まって、5本のビスがそれぞれバラバラな角度で入って行き、センターの狂う原因となるわけです。

普通のアルペン用ビンディングはトーピースとヒールピースが機能的に独立しているため、それぞれのセンターラインが多少くい違っていてもまず問題は生じないのですが、トーピースのヒンジを中心にブーツが回転する山スキー用のビンディングの場合、トーピースが僅かでも曲がって付いてしまうと梃子の原理で誤差が拡大され、ヒール側の中心がヒールピースの正しい位置に下りなくなるという問題が起こってしまうのです。

ですから「たかがネジを締めるだけ!」といっても手を抜かず、精度の高いポジドライバーをしっかりビスにはめ込んで、ビスが垂直に沈んでいくように最初の一回しを慎重にしてください。これだけでもずいぶん精度が違ってきます。

また、“TLT”ではありませんが、フリッチ“DIAMIR”のトーピース後ろ2本のネジは構造上垂直にドライバーを当て難いので、後述のタッピングを行わない場合でも、ビンディングをいきなり板に乗せず、板の穴に直接ビスを2~3山締め込んで正確なネジ山を作ってから(画像↓)一旦ビスを外し、あらためてビンディングを取り付けると失敗がありません。
(ドリルはタップ無しの場合、板の表面にに記載の記載の寸法か、記載の無い場合でもΦ3.8mmで深さ9mmを設定すれば概ね失敗は無いはずです・面取りも忘れずに!)

Bis
(ビスを直接板に捩じ込んで垂直なネジ山を作り、一旦ビスを外した後にビンディングの本取り付けを行う)


【タッピングについて】

また、専門工具が必要ですがビスの曲がりをより少なくする方法も無い訳ではありません。
それは、垂直にタッッピングする事で穴の中心線とビスの軸を一致させ、ビスの頭がブレるのを最小限に抑える事です。
つまり、ビスのネジ山自体がワークに喰い込んで雌ネジを作りながら進入して行く事が軸ブレの原因となるのなら、予めタップで垂直な雌ネジを作っておく事でこの原因を取り除こうという訳です。


なお、タップ自体は通常の工具ですが、ビンディング取り付けビス専用のタップとなると話は別で、通常の工具屋では扱っておらず、プロショップ用のサービスツールを入手するしかありません。
価格も、見た目以上に高価?だったと思いますが、アマチュアにとっては末代モノですからクラブの共同装備としての購入や、永く山スキーを趣味とするつもりなら投資する価値は十分あると思います。

Tapb_1
(ビンディングのビス㊨と同じピッチのタップ㊥単体型か、㊧ハンドル型が必要)

また、下の画像のようにビンディングビス用のタップには2種類の形状がありますが、現在はタップ単体のものは市場で見かけなくなり、メタルジグのスリーブに対応したΦ8mmシャンクのハンドル一体型のものが主流のようです。

Tapb_2  Tapb_3
(㊧画像・上は通常型の単体タップ、下はとハンドル付きタップ、㊨画像の右端は単体タップ用ハンドル)

とは言っても、フリーハンドで正垂直にタップを切る事は意外と難しく、通常のISOネジのタップで金属にネジを切る場合でも、漫然と作業を行うと、僅かな曲がりが障害となってネジが上手く切れなかったりワークの途中でタップが折れて大泣きをするといった失敗も起こりがちです。

スキーの場合でも、慣れた方が十分注意して作業すればフリーハンドでも問題ないのですが、良かれと思ってタップを使っても、誤って斜めにタップを立ててしまうとかえって逆効果となってセンターが狂う原因となってしまいますから、初心者がタップを使うときは下記、①、②、のような補助具があると安心です。

 単体型タップを使用するときにはハンドタップガイド(画像↓)という補助具を使用すれば、よりイージーに正垂直にタップを立てられます。
下の画像はK2の山スキー用板のビンディングをDIAMIRに載せ替えしているところです。
この板のようにチタナル(アルミ合金)の硬いメタルシートがある場合は、Φ4.1mmのドリルを使いたいところですが、敢えてΦ3.5mm~Φ3.6mmのドリルと正確なタッピングを併用する事により、正確でより強度の高いビンディングの取り付けができます。

通常のゲレンデスキーでしたらここまで強度に拘らなくても問題ないのですが、特に山スキーは歩行モードの時トーピースのみに強いモーメントが加わりますし、山スキー以外でもモーグルやジブで遊ぶ方もできるだけ強固にビンディングを取り付けておいたほうがベターだと思います。

Tap  Tap_3  Tap_1 
(ハンドタップ・ガイドを使用している様子/載せ替えのためビス穴をエポキシで埋めた痕跡あり)


 また、現在プロショップではメタルジグの段付きドリル用スリーブの内径に合わせた、Φ8mmシャンクのハンドル型タップを使用するのが一般的で、現在アマチュアに入手が容易なのはこのタイプのようです。

Tapb
(段付きドリル㊨とハンドル型タップ㊧の軸径は同じΦ8mm)

しかしアマチュアがこのハンドル一体型タップを使用しする場合には、前述の汎用ハンドタップガイドは使用できません。
そんな時は、専用のタップガイドを自作すれば(画像↓)簡単に正垂直にタップを立てることができます。

Tapb_6  Tapb_7  Tapb_4
(アルミの端材で造ったハンドル型タップ用の自作ガイドの例)


また、プロショップにTLTビンディングの取り付けを依頼する場合も、純正ジグを使用してドリリングした後、ブロアーで切り粉を吹き飛ばし、そのままジグのスリーブにタップを入れて2回転ほどタップを立てる事で正確に垂直のネジ穴を作ることができますので、取り付けを依頼する時点で、メタルの有る無しに関わらず、板指定のものよりやや小径の段付きドリルで穴明けをし、タップを2山ほど切ってから取り付けるよう指定するのも一法です。

TLTの取り付けに慣れたショップならその必要も無いでしょうが、販売量の少ないTLTの場合、数年前まではTLTビンディングの特性を理解していないショップも多かったと聞いています・・・。


※話は変わりますが・・・、同じビスでもアメリカ製のテレマークビンディング用のビスは規格がまちまちで、アルペンビンディング用のタップが使用できないことも多いので、テレマーク用のビンディングを取り付ける場合は要注意です。(反則ワザですが、メタルシートに一山だけネジを切るという使い方なら流用可)


さて、正確に穴の位置をポンチし、正確にドリリングし、垂直にタッッピングできれば、それだけでメタルジグを使用しなくてもセンターはほぼピタリと許容範囲内に決まります。

つまり、作業は面倒ですが手間を惜しまず慎重に手順を踏めば、TLTでもDIAMIRでもNAXOでもDUKEでも・・・、自分で正確に取り付けられると言う事です。
もちろんテレマークビンディングなんて朝飯前?です!!。

“PL法”だか何だか知りませんが・・・、山スキーヤーにとってのスキーはまさに命を預ける道具ですから、何処の・誰が・どのように金具を取り付けたか判らないスキーを履くより、自分が慎重に組み立てたスキーを自己責任で使用したほうが安心だ・・・と、私は考えています(笑)。


【その他】
調子に乗って、またまた偉そうに薀蓄を語りましたが・・・、正直な話をすれば、実際のビンディング取り付けはここで述べたほど小難しいものでもありません。
ツボさえ押さえておけば、あとは結構アバウトでも大きな問題は起こらないでしょうから、私の文章に惑わされて躊躇せず、まずは実行してみてください。

“最初の1回”は、ベテランのプロだって必ず一度は経験した単なる通過儀礼なのです!

 なお、山スキー用のビンディングの取り付け・調整で、何か御質問がありましたら遠慮なくお問い合わせください。

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山スキー・バックカントリー 2」カテゴリの記事

コメント

大変参考になりました、、、ビンディングの取り付け特に「山スキー」神経を使いますね僕はまだ二台程しか取り付けていませんかわずかに左右がずれているのが確認されます。

投稿: べんさん | 2010年8月23日 (月) 21時13分

“べんさん”ようこそ!
私の拙いブログが参考になったなら幸いです。
私はウン十年前もから自分でビンディングを取り付けていますが、慣れてしまえば特に困難は感じません。
ただ、慣れに甘えず工程ごとに神経質なほど慎重な確認作業を心がけないと思いがけない失敗で大泣きをする事もありますので要注意ですね。
では、今後とも「山道具道楽」をよろしくお願いいたします。

(追伸)
今年の夏は大雪・十勝岳周辺を歩いていました。
冬には三段山を滑る予定です。

投稿: 理事長 | 2010年8月23日 (月) 22時05分

十勝、大雪、三段山の麓に居ます三段山に来るときは一緒に滑りませんか。。。。。

投稿: ぺんさん | 2010年8月23日 (月) 22時14分

“べんさん”ご返信ありがとうございます。
PENSHION TRADINGPOSTのサイトを拝見して追伸をかきました(笑)。
冬に北海道に行く時は連絡させていただきます。
では! 

投稿: 理事長 | 2010年8月23日 (月) 23時13分

お元気ですか、、、、今年のスキー板新しくしました深雪専用ですがK2ダークサイド幅が156-124-145です長さは181冬深雪が楽しみです北海道に来るときは連絡ください「三段山」「羊蹄山」楽しいですヨ。。
追伸
金具取り付けまだしていません、自分で取り付けるので

投稿: べんさん | 2010年10月26日 (火) 00時31分

べんさん、御無沙汰しています。

新しいスキーは強力そうですね。
このプロポーションだとアルペンスノーボードを両足に履いているのと間違えられそうですね。(笑)

北海道に行けるようでしたらTRADINGPOSTさんに連絡してみます。
そういえば夏に十年位ぶりに十勝岳に行ったら白銀荘が新しくなってましたが、今でも昔みたいに安く泊れるのかなぁ?
では、今後ともよろしく!

投稿: 理事長 | 2010年10月26日 (火) 10時31分

こんばんは!以前MSRのテントのベタベタの件で投稿させていただきました。
以前使用した細板で練習後、本日、満を持してビンディング取り付けし、成功しましたので、御礼かたがたコメントさせていただきます。
こちらのサイトがなければ自分での取り付けは踏みきれなかったと思います。
今年は、山スキー道具を自分と嫁の二人分を新調する必要があった為、国内で普通に買うと軽く30万オーバーとなってしまうので板・靴は海外からとしました。
さすがにビンディングは国内のお店で買おうとしましたが、山スキービンディングの高価さもあり、思い切って海外通販→自主取付としました。
貴サイトの丁寧なご説明のおかげでミスもなく取付けることができました!(穴の位置が若干ずれた箇所もありましたが、修正可能範囲でした!)
今年、Dynafitは初使用なので、今後、またご質問させていただく事項等あるかもしれませんが、その節はどうぞよろしくお願いいたします!!
本当に、有り難うございました!!

投稿: matsu | 2010年11月 7日 (日) 22時47分

matsu さん
取り付け成功おめでとうございます!
なお、御不明な点がございましたら、私の可能な範囲で助言いたしますので、遠慮なくお訊ねください。
では!

投稿: 理事長 | 2010年11月 8日 (月) 08時21分

ハンドル型タップを入手したいのですが、ネットで探してもなかなかヒットしません。
販売先が分かるようでしたらお教えいただけませんか?

投稿: Yoshi | 2011年2月18日 (金) 13時45分

Yoshi さん、ようこそ。

早速ですが、スキー用のタップはプロショップ専用のサービスツールなので一般には販売されていないのかもしれません。
私の購入したのは少なくても十年以上前なので残念ながら店名は定かではないのですが、たぶん神田の“フソウスポーツ”か“ワンゲルスポーツ”だったと思います。
高いスキーを買ったついでにサービスツール用のカタログを見せてもらって注文してもらった記憶があります。

現在でも、大きなスキー用品店だったら同様に注文できると思います。

では!

投稿: 理事長 | 2011年2月18日 (金) 21時22分

理事長さん、突然恐縮ですがTLTの調整について御聞きしたいのですが
今回、友人から譲り受けた[TLT Vertical FT12]をインビスで取り付けました。
そこで、改めてヒールピースを調整しましたが、専用の調整プレートを持ち合わせていませんので、5.5mmのヘキサレンチを挟み調整しました。

あと、トゥーピースは調整部が無いためセンターだけしっかり調整しました。

問題はヒールピースの開放値なのですが、見る限りロッドの開放値と
本体の回転方向の調整がある様ですが、この回転方向の調整の目盛りを
どこで見れば良いのかが解りません。
(以前使用していたままので、共に9でセットされているようですが)

あと、アルペンビンディングなどはブーツをセットして、前圧値などの適正を見る方法がありますが、TLTはそう言ったものは無いのでしょうか?
不躾な質問で恐縮ですが、お応え頂けると幸いです。
よろしくお願い致します。

投稿: Katsu | 2013年4月25日 (木) 19時00分

“Kstsu”さんようこそ。

まず、TLT Verticalの調整用シムの厚さは6mmだと思います。(Radicalは5.5㎜です、FT12はわかりませんが多分6mmでしょう)
また、左右方向の解放値は、普通のFTではアルミのスプリングカバーのネジの後ろにある輪状のリブを、ハウジングのにある線が後ろから5.6.7~10となっていますのでそこに合わせればOKです。
FT12は使った事が無いので判りませんが目盛は、7.8.9~12になっていると思いますのでそれに合わせれば良いんじゃないでしょうか?
それからTECビンディングには前圧はありません。
ただしヒールピースのクリアランスが標準より小さいと解放値が高めになり大きいと小さくなります。

では!

投稿: 理事長 | 2013年4月25日 (木) 21時04分

早速の御返事ありがとうございます。
助かりました。
来週末、立山の予定だったのでシェイクダウンでトラブル訳ににも行かないので、色々調べたのですが解らず、
理事長さん頼みとなりました。
ホント助かりました。
これで、安心して行って来れます。

投稿: Katsu | 2013年4月26日 (金) 10時00分

ディナフィットTLTバーチカルの取り付けで参考にさせて頂きました。フロントのセンター出しでは、片方はスムースにセンターが合ったものの、もう片方は2.5ミリほど狂いましたが「山道具道楽さん」の「力づく合わせ前3本締付後に後2本締」でバッチリ修正できました。2.5ミリ合わないまま穂高に出かけようと思っていたのですが、思い直して「力づく合わせ」を試してみて良かったです。これで
誤解放に怯えることなく安心して滑降を楽しめます。
ありがとうございました。これからも得難い有用な情報提供に期待しております。

投稿: shanty | 2015年4月27日 (月) 21時10分

shanty さん
取り付け成功おめでとうございます!

センター合わせの基本は正確なポンチ打ちと、必ず細めのパイロットドリルから穴明けをする事、また可能ならタップを垂直にガイドしながら、1~2山軽くネジを立てる事です。
これでほぼ許容範囲内には収まるはずです。
まぁ、それでも少々センターがズレる事もありますが、その時はネジを締める順番を試行錯誤しながら無理矢理合わせるしかありません。

では、今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 理事長 | 2015年4月28日 (火) 07時34分

はじめまして。地元でビンディングを取付できるところがなかなかなくて、検索していたところこちらへたどり着きました。
ビンディングは
DYNAFIT TLT RADICAL FT 110MM
ですが、取り付けはしていただけるものでしょうか?

投稿: はな | 2015年5月 9日 (土) 18時06分

“はな”さん、はじめまして。

早速ですが、私は、加工・改造を含め一切の依頼をお受けいたしておりません。

ではよろしく!

投稿: 理事長 | 2015年5月10日 (日) 21時09分

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