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2011年7月

2011年7月30日 (土)

初心者でも失敗しないシェル出しシステム?①

便利度 :★★★★☆
工作度 :★★★☆☆
推薦度 :★★★★☆
危険度 :★☆☆☆☆
(シェル出しは自己責任で!)


St_2
(完成した“スチーム式シェル出しシステム”での作業風景)

最近は、山スキー用のランドーネブーツでも熱成型が可能なサーモインナーが主流となり、自分の足に容易にフィットさせられるようになりました。
しかし、それらのブーツも所詮欧米人の足型を基準に作られたモノに過ぎません。
したがって、日本人の足に無理無くフィットし、当たらずかつ緩すぎないブーツにチューンアップしたければ、サーモインナーの成型に加え、シェルにも手を加えなければならない場合も多いのです。

そんなスキーブーツチューンの代表が所謂“シェル出し”です。
アルペンレーサーがブーツのセンターラインを変更するような大きなシェル加工をする場合には、専門工具のあるプロショップに数万円の費用を払って依頼する以外方法は無いかもしれませんが、山スキー用のランドーネブーツの当り出し程度なら、アマチュアでもヤル気さえあれば問題無く行う事ができます
つまり、自分で、自分のブーツを世界一自分の足にフィットするブーツに作り変える事も不可能ではないということです。

しかし、アマチュアがこの作業を行う場合のネックになっているのが、ヒートガンによるシェルの加熱の際、どの程度まで加温すべきかということではないでしょうか。

プロは高価な専用工具を持っていますし、一シーズンに多ければ数十足以上もの加工を行っていますので、さすがに経験に裏打ちされた勘があり、こればかりはアマチュアには太刀打ちできません。(中には口ばかり達者で、技術は素人以下の下手糞なプロもいますので要注意ですが・・・・、笑)

アマチュアがこの作業を行う際ありがちなのが、温度調節式のヒートガンを使ったとしても、熱風の温度が高すぎ、一発で新品のブーツがオシャカになってしまう事と、逆にそれを恐れて温度を控えめにしてしまい、上手く塑性変形させられないことです。

また、私は自作のピンチクリアーを使っていますが、プロ用の専用工具とは異なりセットするのに手間取ります。
一人で作業する時は、ヒートガンで加熱した後ピンチクリアーで押し出すまでの作業を迅速にしないとシェル温度が低下し満足な結果が得られない事もありがちです。

たとえ、放射温度計を使用してシェル表面温度を正確に90℃まで上げられても、ピンチクリアーのセットから成型までの間にタイムラグがあると、温度が下がってしまい加工が不十分となったり、また温度低下を見込んで100℃以上まで温度を上げてしまうと、場合によってはシェル表面が溶解してしまうかも知れません。

そこで、何とかシェルの温度を90℃前後以上には過熱させず、しかも加工中もある程度の時間その塑性変形に必要な温度を維持できて、確実な成型を行う方法は無いかと思いを巡らし、知恵を絞ってみました。

そんな時・・・、以前キッチンのレンジフードの掃除用に通販で買ったスチームクリーナー(画像↓)が有ったのを思い出したのです。

St_9

このスチームクリーナーは、CMに騙されて通販で買ってしまった物で、残念ながら小型過ぎて宣伝通りの能力が無いためお蔵入りになっていたのです。

これをシェルの加熱に使えば、熱媒体は高温の熱風でなくスチームですから、幾ら温度が上がっても100℃+α以上にはなりませんので、シェルを駄目にしてしまう恐れは無いはずです。
また、このスチームクリーナー自体の能力が低いため、ホースの先端では100℃以上のドライスチームにはならず、せいぜい90℃位までシェルを温める程度でしょうから、この用途には最適かもしれません。

そこで、早速工作開始です。
構造は、以前作った自作のピンチクリアーのリングの部分にステーを取り付けて、そこにスチームクリーナーの延長ノズルのホースを、丁度リングの中央にスチームが吹き付けられる角度で固定しました。(画像↓)
ホースは可能な限り短くし、寒冷時に使う場合には、ホースを断熱材に通す必要があるかもしれません。

St_8  St_7
(リングにステーを取り付けそこに斜めにホースを固定した)


ここまでの工作は簡単なのですが・・・、問題はスチームクリーナー本体の改造です。

このスチームクリーナーは、ハンドルのレバーを押している間スチームが噴出すようになっていますので、手を離すとスチームが止まってしまいますし、何よりスチームの量を微調節する事ができない構造なのです。

そこで、一旦分解して、レバー内部にタップを立てた金属板を取り付け、それをノブを取り付けたビスで引くことによってレバーの開閉を行い、継続した任意のスチーム噴出量を得られるようにしました。(画像↓㊧)
言葉では簡単ですが、この部分には少々苦労させられました。
(オリジナルのレバー機能も生きていますので、スチームクリーナー本来の用途にも使用可能です)

St_11  St_10
(㊧微調節用のノブ、㊨完成した状態)

で・・・、完成したのがこの『初心者でも失敗しないシェル出しシステム』です。

ピンチクリアーでの押し出し作業中も、シェルにスチームを噴きつけて一定時間加熱しながら成型できますので、初心者でも確実な塑性変形加工が可能なはずですし、経年戻りも防げるかもしれません。

では・・・早速、実際のシェル出し作業を行ってみましょう。


以下、続く・・・

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2011年7月23日 (土)

“MSR/リアクター”、マイナーチェンジの理由?

便利度 :★★★☆☆
工作度 :☆☆☆☆☆
推薦度 :★★☆☆☆
危険度 :☆☆☆☆☆

(用途がマッチすれば推薦度は“★★★☆☆”位にはなるでしょう?)


“MSR/ リアクター”は専用のクッカー以外は使用できないというハンデはありますし、製品としては未成熟な部分も多く信頼性も未知数ではありますが、非常に効率の良いストーブで、風に対しても抜群に強く、上手く活用すれば長期の山行での燃料の消費量を驚くほど軽減くしてくれそうです。

React1

まぁ、私は最近長期山行には行けませんので、現在の主な用途はスキーツアーの出発前に車のそばでテルモス用の湯を沸かすくらいですが、それでも風の強い戸外であっという間にテルモス2本分の湯を沸かしてくれるので、それなりに役に立っています。

しかし、“MSR”の日本代理店はキャニスター(カートリッジ)の輸入が面倒なのか?同社のガスストーブの取り扱いをしていませんから、当然この“ リアクター”もガス検を通っておらず日本で正式販売はされていません。
また使用条件によっては一酸化炭素の発生量も多めで、テント内の使用には不向きだとも聞きます。
いずれにせよ、かなり用途の限定される道具であることは否めませんし、普通の山行では出番も少ないでしょうから、仮に我が国で発売しても私みたいな新し物好き以外にはあまり需要は見込めないでしょうね。

そんな訳で、国内ではあまり話題にはならない“MSR/ リアクター”ですが・・・、07年の発売後間もなく、いつの間にかマイナーチェンジしていたのです。

Reactor_7
(新・旧、REACTOR の底部)

私が最初に購入した初期ロットの“MSR/ リアクター”の熱交換部は鍋底と一体型たダイキャスト製の厚いフィンが特徴だったのですが、直後のマイナーチェンジで普通のプレス成型のアルミ製の鍋底に、アルミのフィンをスポット溶接で後付けした構造に変わってしまいました。(バーナー部にも小変更があります)

Reactor_4  Reactor_5
(㊧初期ロット、㊨マイナーチェンジ後の熱交換部)

また、持った感じでも明らかに軽くなったように感じたので重さを量ってみたところ、なんと信じられないことに90g も軽くなっていたのです。
90gといったら普通の小型のストーブ1個分ですから、脅威の軽量化・・・、と言ってもよいでしょう。

Reactor_2  Reactor_3

同時に、ダイキャスト製から普通の底に替わったため全高もわずかに低くなりました。(画像↓)
このため以前の記事でご紹介した“携行の便利技”を使った場合、蓋を閉めると心持ち浮いた状態になる様な気もします。

Reactor_6
(㊧マイナーチェンジ後、㊨初期ロットの製品)

ところで、ULブームも定着し、軽量化がトレンドの登山用具界の中にあって、なぜMSR社は“REACTOR”の当初の設計で、重くなることを承知で、またコストの掛るダイキャスト製の熱交換部を採用したのでしょうか・・・? そして、何故すぐに現在の形に変更したのでしょうか・・・?

さて、JETBOILやETA-POWERなど、薄いアルミニウムの熱交換フィンのあるクッカーは中に水が入っていない状態で空焚きすると短時間でフィンがメルトダウンしてしまうと言われています。

そんな馬鹿な事は現実には起こらないかもしれませんが、しかしそれに近い事は雪や氷で水を作るときに起こる可能性があるのです。
つまり呼び水を入れずに直接雪のブロックをクッカー(カップ)に入れ、直後にバルブ全開で燃焼させるとフィンの熱が均等にクッカーの中の雪に伝わらず、溶けたわずかな水も瞬時に蒸発し、鍋底が部分的に過熱してしまう事が考えられるからです。
JETBOILのマニュアルにも確かそんな事が書いてありますが、この手の製品で雪から水を作るときには少々注意深さが必要という事のようです。

その点、MSRのリアクター初期ロットの製品であれば、鍋底一体型のシッカリしたダイキャスト製の厚いフィンが熱交換部に使われていますから、雪から水を作るときにも、JETBOILやETA-POWERなどよりも乱暴な扱いにも耐えられるはずだったのです。

ところが、こんなシビアな条件下でのヘビーデューティーに耐える頼もしいREACTOR が、発売後わずかな期間で、普通の軽い“早沸きストーブ”にマイナーチェンジされてしまいました。

理由は何なんでしょうか?
旧製品に問題があったからなのか?、軽量化のためなのか?、はてまた、コストダウンの目的なのか?・・・。
詳細は不明ですが、やはりULブームの影響で重い道具は市場で嫌われるというのが一番の理由なんじゃないか・・・と、私は考えます。

確かに商業的な観点に立ち、ユーザーの9割以上を占めるであろう一般登山者にとってはオーバースペックでしかない耐久性と90グラムもの軽量化を、市場という天秤に掛ければ自ずと導き出される結論だったのでしょう。

・・・以上“下衆の勘繰り”だったかもしれません。(笑)

しかし、このマイナーチェンジは海外遠征やハードな長期山行など、堅牢で信頼に足る道具を求める方の目には軟弱な道具に成り下がったと映るようです。
少数でしょうが、敢えてマイナーチェンジ前の旧型を探している方もいると聞きました。

現在の“UL”とは正反対に、”HD(Heavy-duty)”が合言葉だった世代を過ごした私としては、リアクターが普通の道具になってしまったのを少々残念には思いますが・・・、冷静に考えてみれば、現在の私の用途では515gに軽量化されたマイナーチェンジ版で十分なのですから、軽くなった事は大歓迎と言うべきなんでしょう。

何れにせよ、これで、2人での山行でしたら、JETBOILとのハンデはごく僅かになり、ETA-POWERにも(汎用性という面を除き)水を開ける事ができましたので、私ももう少しこのREACTORを活躍させてあげる事ができそうです。

また、冒頭に述べたように、この“リアクター”は「道具」としてはまだ未完成な部分も多々あり、使い勝手も決して良いとは言えません。
そんな訳で、この製品の気になる点についても適宜改造を行っていますので後日記事にしてみたいと思います。

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2011年7月16日 (土)

ヘッドランプ“STORM”に浮気する

便利度 :★★★★★
工作度 :☆☆☆☆☆
推薦度 :★★★★☆
危険度 :☆☆☆☆☆


私は最近、山用のヘッドランプとして“プリンストンテック社”の“QUAD”と“EOS”という製品を使っています。
その理由は、これらの製品が、通常の生活防水より一段上の、1メートルの水中に30分浸しても浸水しないというIPX7等級の防水性能を持っているからです。
雨の中の行動や、淵を泳ぐ時にも剥き出しでザックの雨蓋に入れておいてもOKというのは、私にとって大きなメリットです。
そんな訳で、特に“EOS”についてはトリチウム・マーカーを組み込んだりもしましたので、今後も長く愛用しようと考えていたのですが・・・。

Storm_1  Storm_2
(㊧QUAD、㊨EOS)

しかし、その後ブラックダイヤモンド社から上記のヘッドランプと同等のIPX7等級の防水機能を持った“STORM”というヘッドランプが発売されたのを知りました。
スペックを見ると、2種類のハイパワー白色LEDを搭載しそれぞれが無段階の照度ディマー機能を持つなど、かなりの多機能ヘッドランプのようです。
しかも、今までの殆どのヘッドランプの共通の問題点であった、ザックの中で不用意にスイッチが押され点灯してしまうという大問題を一気に解決するロック機能まで搭載されたとの事でした。

まだ“QUAD”も“EOS”も健在で、私には新しいヘッドランプを購入する必要性など無いのですが・・・。
いつもの悪い癖で・・・、また無駄遣いしちゃいました。
「山道具道楽」は道具に関しては浮気性なのです!

Storm_3
(STORM も電池が一本多い割には軽量だ)

・・・で、早速レビューして見たいと思います。

まず、“STORM”の機能ですが、通常のヘッドランプ機能としては、遠距離用コリメーターレンズ付き超高輝度ハイパワーLED1個の点灯と、近くを広く照らすためのハイパワーLED2個同時点灯の2モードがあり、しかもいずれのモードも点灯中のスイッチ長押しで無段階に明るさが変えられます。
照射角の広い近距離モードでディマー機能で照度を落とせば、テント内のランタンとしても便利に使えますから、これがあればテント泊でも別にランタンを持つ必要は無いでしょう。

Storm_5  Storm_6
(㊧遠距離モード、㊨近距離モード)

また、遭難した時以外はあまり使わない機能だと思いますが、早押し3回でストロボモード(点滅)にも切り替えられます。

トリチウムマーカーを組み込むため分解してみたところ、以上の計3個のLEDはいずれも表面実装タイプで、アルミの放熱板の上に取り付けられ耐久性も高そうな印象ですし、効果の程は判りませんがこのヒートシンクの熱をバッテリーに伝え寒冷時の起電力低下を防ぐ機能も備えているそうです。

さらに、他の登山用ヘッドランプに無い特徴が赤色の砲弾型LED2灯による“Night Vision”モードを搭載しているということでしょう。
波長の長い赤色の光は、網膜細胞に対する刺激が少なく、暗順応を妨げることなく視界を確保することができますから、混雑した山小屋で隣に見ず知らずの他人が眠っている状況でも、周囲の顰蹙を買わず水を飲んだり時計を見たりできて、結構便利かも知れません。

この赤色光の“Night Vision”モードへはOFFから3秒の長押で切り替わりますが、一度赤色灯モードにしておくと次に3秒の長押をするまではこの状態が保持されますので、山小屋などでは夜間はずっとこのモードにしておけば、突然の閃光で周囲に迷惑を掛ける心配も無さそうです。

Storm_7
(Night Vision モード、実際にはもっと赤い色!)

そんな訳で、この赤色モードは登山者以外でも夜間の戸外で目を暗順応させたまま星野図を見たり機器の操作を行わなくてはならない天文ファンにとっても最適な機能だと思います。

そして、特筆すべきなのがメインスイッチのロック機能です。
私も以前、ヘッドランプのスイッチがザックの中で知らぬ間に誤作動していて、いざ使用しようと思ったら既に電池は空っぽになっていた・・・、という苦い経験が一度ならずありますので、この機能には大注目していました。

この製品のロックアップは、機械的にスイッチが入らないようにするのではなく、回路を工夫してロックモード中はスイッチを押しても照明用のLEDには電流が流れなくなるような仕組みです。
ロックは6秒の長押しでON、もう一度6秒の長押しでOFFとなり、ロック時にスイッチを操作すると基板上の青色のチップLEDが点滅してロック状態だと教えてくれるようになっています。
ザックの中で不用意にスイッチが押され誤点灯するのは、多くの場合一瞬の接触によるものでしょうから、6秒もの長押しでロック解除という設定なら、誤点灯を99.99パーセント防ぐ事ができるでしょう。

また、ランタイムも遠距離(Distance)モードの1灯ハイパワーLEDでも50時間~200時間(ディマーで照度を落とした場合)、2灯の近距離(Proximity)モードで36時間~125時間との事ですから、電池が1本多いということを考慮しても、“EOS”のHi/6.5時間~Lo/60時間より格段に電池が長持ちすることになります。
きっとレギュレターや出力制限回路の設計が良いのでしょう。

その他、バッテリーの残量インディケーター(ONした時チップLEDが緑・黄・赤で点灯)なども備え、まさに至れり尽くせりの多機能ヘッドランプといった感じですし、計5灯ものLEDがあれば1灯式の物と異なり、LEDが1個故障したとしても真っ暗闇の世界で途方に暮れる事にはならないはずですから、高い防水性と相俟って信頼性の面でも申し分の無い製品と言えるでしょう。

さて、以上褒めてばかりですが・・・。
気になる点も無いわけではありません。

まず気になるのは、バッテリーが単4を4本使用するということです。
この手のLEDライトは、普通単4の3本使いが殆どなので、実は私も買って初めてこの事に気付きました。(汗)
まぁ、電池4本込みでも、3本仕様の“EOS”と較べてそう大きな重量増は無いですし、ランタイムも長くなっていますので単純比較はできませんが、スペアのバッテリーが1本余計に必要だということを考えると、実用重量としてはやや重くなってしまうかもしれません。

また、私の個体だけかもしれませんが、シリコン製の防水ガスケットの造りが粗い様な気もします。

それから、多機能は良いのですが1個のスイッチでモードの切り替えからディマーの作動、ロックアップまで総てを処理しなければならないので、ヘッドランプとしては操作がかなり複雑です。
複雑といっても覚えるのに苦労するほどではありませんが、操作法を知らない方にレクチャー無しで貸すと、借りたほうも操作に戸惑うと思われますし、持ち主でも半年使もわないと操作を忘れてしまいそうです。
最近物忘れの多くなった私は(涙)、格好悪いとは思いましたが、念のため裏蓋にインクの無くなったボールペンで「LOCK→6Sec/RED→3Sec・・・」などと操作の要点を刻んでおきました。
まぁ、操作の煩雑さは多機能と表裏一体ですからある程度は割り切るべきなのでしょうね。

ヘッドランプは日帰りの山行であっても必携のアイテムですし、ある意味では野営装備を持たない日帰りの山行で万が一灯火が必要になった時こそ、高機能のヘッドランプが必要になると考えたほうが良いでしょう。
その意味でも“STORM”は、極端な軽量化志向の方を除き、登山用としては私の考える最高のヘッドランプの1つであり、自信を持ってお奨めしたいベストバイ・アイテムだと確信しています。

さて・・・、次はこの“STORM”にトリチウム・マーカーを取り付けた時の様子を記事してみようと思います。


【余談ですが・・・】

そういえば、大学生の頃ですから40年近く昔でしょうか?、一時期フランス製の“ワンダー(Pile Wonder)”というヘンテコな山用のヘッドランプが一世を風靡した事がありました。
頭に着けるランプ部と電池ボックスがコネクター付きのコードで繋がった分離型のヘッドランプで、ブリキの玩具みたいな電池ボックスにも別にランプがあり、単独でも懐中電灯として使える製品でした。

確か、高田光政さんが輸入していた(?)せいなのか、あるいはフランス製という妙な憧れが働いたのか・・・、理由は定かではありませんが、一時期仲間は全員これを使っていました。

筐体上部に細引をつけて首から掛けるのが「粋」とされ、皆フランス人クライマーになった気分で胸に“ワンダー”をぶら下げ、涸沢や三田平あるいは真砂の天場を夕刻にうろついていたのも、今考えれば赤面モノの思い出ですね。

製品は・・・、と言えば、防水性はゼロだし、すぐ接触不良を起こすし、落とせば蓋が開いて電池が吹っ飛んでいくし・・・で、良いところと言えば単純な構造ゆえ曲げたり押したりして修理ができたこと以外は無かったはずなので、当時なんであんな物を得意になって使っていたのか・・・、今ではまったく理由がわかりません。
しかも、電池も見た事も無い箱型の奇妙な物体(3R12Eという規格らしい?)で、普通の電気店では買えず、わざわざ登山用品店までまとめ買いに行かねばならず、合宿前夜に慌てた記憶も鮮明に残っています。


今回、最新の多機能ヘッドランプの記事を書くにあたり、同じヘッドランプという道具一つをとって見ても、あの当時の最先端だった“ワンダー”と、現在最新の“STORM”を比較すると、かくも隔世の感があるものなのだなぁ・・・、と40年という時の流れをあらためて思い知らされた気がします。
進歩は良いことなのでしょうが・・・、私達人類はこの半世紀をあまりに早足で歩いてしまったのかもしれませんね。

ところで、話は変わりますが・・・、40年後の登山者が現在の最新型多機能ヘッドランプを見たとき、どんな感慨を抱くのでしょう。
今の私が大昔の“ワンダー”を見るのと同じように「昔はこんなに幼稚なモノを使っていたんだなぁ・・・」、と笑うでしょうか?
それとも・・・。

いずれにせよ、未来の世界で私達の末裔が、夜道を歩く時にヘッドランプでなく松明を使うようになっていない事を願いたいものです・・・。

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2011年7月 9日 (土)

春山必携!ノーズシェードを作る

便利度 :★★★★★
工作度 :★☆☆☆☆
推薦度 :★★★★★
危険度 :☆☆☆☆☆


※今回は“ノーズシェード”・・・、早い話が「鼻カバー」(画像↓)です。

Ng4

厳冬期のディープパウダーも楽しいですが、春の陽を浴び軽装備でコーンスノーを蹴散らして滑る残雪期の山スキーもまた最高に楽しいですよね。(・・・というか、ザラメ雪だと私みたいなヘッポコスキーヤーの技術でもなんとか誤魔化せちゃいますからね)

しかし・・・、春の日差しは思いのほか強く、、“もち肌”(笑)の私としては、十分注意をしているつもりでも、調子に乗って油断していると雪焼けで酷い顔になり、翌日の職場で顰蹙をかうこともしばしばでした。

これを防ぐには汗で流れてしまう日焼け止めに加え、ノーズシェード(ノーズカバー)を併用して鼻の頭を物理的に太陽光線から遮断してしまうのが簡単・確実です。

以前は“JULBO”などのヨーロッパ製の山用サングラスには皮製のノーズガードが付属している物も多かったのですが最近は山道具屋でもあまり見なくなりました。
最近の物では、“アディダスTERREX-PRO”にセットされる樹脂製のノーズカバーはかなりシッカリしていて風雪に対する保護効果も高そうですが、外人さんの鼻の高さに合わせたのかやや大袈裟ですし、価格も結構します。

さて、昔の話ですが、私は普段使っている眼鏡に付けるノーズガードを買おうと山道具屋に行ってみたのですが、そこには皮製のスナップ留めの物一種類しか無く、それもあまり気に入らなかったので、自分でノーズガードを作ることにしたのです。

Ng5
(普通の眼鏡にも取り付け可能)

以来、何個か自作しましたが、はじめは皮の端切れやVHSテープのポリプロピレン製ケースを廃物利用して作ったこともありましたが、最近は“カイデックス”(画像↓)という熱可塑性プラスチックの板を使って自作しています。

Ng3
(耐衝撃性が高いのでラジコンカーのバンパー用として売られている1mm厚の“カイデックス板”)

作り方は画像をご覧になれば一目瞭然だと思います。

カイデックス板がよく使われるのはナイフのシース(鞘)用としてなので、ナイフメーキング用品を扱っている店の通販でも購入ができると思いますが、カイデックス板はまたラジコンカー用パーツとして模型店等で10cm×30cm×位の大きさで小口売りしていますので、ノーズシェードを作るくらいでしたらこちらのほうが無駄が無いかと思います。

この素材は、鋸や大型の鋏で自由にカットでき、ヤスリで仕上げられますから加工も容易ですし、加熱にはヒートガン以外にも、オーブントースターや熱湯等が使用でき、軟らかいうちに形を整えればかなり自由度の高い成型が可能です。

Ng1  Ng7
(100℃以前で軟化して3次元的な成型もできます)

取り付ける方法は、お使いの眼鏡やサングラスに合わせ工夫する必要があるでしょうが、私は上端に細いベルクロを手縫いで取り付けて眼鏡に固定するようにしました。

Ng6
(カイデックスに下穴を開けてからベルクロを縫い付けた)

春スキーで、鼻の頭の日焼けを何とかしたいと考えている方には是非試してもらいたい工作だと思います。
また日焼け対策以外にも、厳冬期に防風・防寒の目的で使用すればバラクラバ(目出帽)の出番を少なくする事もできるでしょう。

外見はギャグ漫画のようで笑われるかも知れませんが、効果は抜群ですよ!




【余談ですが・・・】

もう一度行ってみたい・・・、と思う場所はたくさんあるが、哀しいかなその多くは現在の私の体力や技術ではたぶん辿り着けそうもない山奥だ。

しかし、単に「行きたいのだが、行き難い」場所だったら、プロガイドさんにでもお願いして引っ張って行ってもらえば「行ける」場所にする事も可能なのだろうが、「行きたいが、もう存在しない」場所だと、これはもう諦める他は無い。

そんな「行きたいが、もう存在しない・・・」場所として、私が真っ先に思い浮かべるのが『叶後(かのううしろ・かのうじろ)』の廃村である。

“そこ”を最初に訪れたのは昭和40年代初頭だっただろうか?、初めてあの不思議な空間に足を踏み入れた時の驚きは今でも鮮明だ。

山道を下っていくと突然に視界が開け、すり鉢のような内陸斜面の底に小広い草原が広がり、中央を流れる小川の畔には畑作の痕跡があり、東側の高みには風情のある萱葺きの民家が・・・、という長閑な山里の光景が唐突に目に飛び込んでくる。
しかし、ここは麓の里ではない、近い集落から歩いても何時間か掛かる山の上である、何でこんな所に開けた平地があり、何故こんな所に人が住み、どうやってこんな所まで材木を運んで家を建てたんだろう・・・。
同行者はガイドブックか何かでその存在を知っていたようだが、予備知識の無かった私は全く予想もしない光景に些か思考が混乱した。

そして、この情景をさらに現実離れしたモノにしているのがその背景である。
背後には100メートルを越す断崖絶壁が聳え立ち、しかもその絶壁の中央には、鋭利な刃物で縦に切り込んだような、狭いところでは幅数メートルほどの一筋の岩の裂け目が走っている。
後にこの岩の割れ目が『牢口』と呼ばれていると聞いたが、まさに名前そのままの不気味さを持つ奇観中の奇観である。
長閑な山里の風景と、その背景の凄まじさ・・・、このアンバランスさが『叶後』の印象をさらに強烈なものにしているのだろう。

写真が無いのが残念だが、知らぬ人が初めてこの風景の写真を見たら、きっと映画の宣伝にでも使われたCG合成だと思い、実写だといっても絶対に信じてもらえないだろう。
まさに、絵に描いたような「隠れ里」の風景である。
郷土史を調べれば、たぶん興味深い言い伝えの類も数知れないはずだ。

さて、この『叶後』という場所はいったい何処に在ったのか、というと・・・。
現在では本チャンに近いマルチピッチの練習のできる貴重なクライミング・ゲレンデである西上州の二子山の西、魚尾峠から、ビルディングフェースで名高かった叶山方面に暫く歩いた場所である。(画像↓)
以前は二子山から叶後を経由して魚尾に抜ける山道があったが今では地形図からも消滅している。

Kanouusiro_2  Kanouusiro2
(ほぼ中央が『叶後』だった場所 ※カシミール3Dで山旅クラブの地図を表示)

二子山も昭和50年前後からクライマーで賑わうようになり、さらに股峠の裏側の林道から入山するルートが知られてからは結構人気のゲレンデになったが、当時は一部のクライマーにしか登られておらず、一般コースを含め訪れる登山者も少なく、山も静かだった。

『叶後』も私が最初に訪れた昭和40年代初頭には既に廃村で、萱葺き民家とトタン張りの掘っ立て小屋しか残っていなかったが、廃屋の中には布団や鍋釜・茶碗など生活の匂いが感じられ、周囲には畑作の痕跡も見られたから、おそらく戦後も暫くはここで耕作をして暮らしを立てていた人がいたのだろうと思われる。

その後、再びここを訪れたのはそれから暫く後で、あの『牢口』の割れ目の中はどうなっているのだろうと、神流川側から沢を詰めルンゼを登攀した時だった。

『牢口ルンゼ』の中はといえば・・・、この奥数百メートルにあの桃源郷が存在すると知ってはいても素直には信じられない気がしてくる不思議な空間だった。
まさに奇奇怪怪な景観で、沢床は広いのに頭上の極端に狭まった徳利の断面のような地形があったり、スリットのように狭い沢幅いっぱいに巨大なチョックストーンが挟まっていたり、まるで映画インディージョーンズさながらの世界を、ショルダーやアブミで越えたり、岩の間を潜ったりして前進したのを覚えている。

西上州は奇景・奇観の宝庫だし、山上の意外な場所に人の営みの痕跡が多く残っている土地柄ではあるが、この『叶後』は総てにおいて別格の不思議な空間だった。

その後、もう一度・・・、もう一度・・・、とは思っていたのだが・・・。

しかし・・・、現在“そこ”へはもう行くことができないし、行けたにしても、もうあの夢のような風景は既に存在しないのである。

その理由は、秩父セメントが巨大な石灰岩の円柱である叶山に目を付け、採掘を始めたからだ。
しかも、周囲の景観に配慮?したのだろうか、武甲山の様に露天彫りで側面から削ってしまう方法は採らず、叶山の山体に螺旋状のトンネルを掘って地下から機材や重機を頂上まで運搬し、上から削ぎ落とすように石灰岩を採掘するという手の込んだ採掘法を採ったのである。

そんな訳で、現在叶山頂上の麓から見えない所では何台もの巨大重機が呻りを上げ、この付近の地下にはトンネルが縦横に走り、数十キロにも及ぶといわれる長大な地下ベルトコンベアーは日々絶える事無く大量の石灰岩を下界まで流し続け・・・、結局、それが私達の街を造っているということだ。
その代わりに、叶山は上部から輪切りにされるようにテーブル状に削られ、何十年か後にはこの地上から姿を消してしまうのだろう。

気になってグーグルアースを開いたら(画像↓)叶山は想像以上に酷い状態になっていた。
山頂を覆っていた豊かな樹林の帽子は既に跡形も無く、画像からも乾いた石灰岩の台地が広がっているのがよく分かる。
しかし、これも幸か不幸か麓からは見えないのだ。

Gekanousann  Gekanouusiro
(画像中央が『叶後』だった!所、その左の白い部分が削られた叶山)

そして、そんな景観に配慮した隠密採掘をする上でも、下界からは見えない山中の隠れ里『叶後』はその前進基地としても好都合だったのだろう。

現在は採掘とベルトコンベアー搬送の中継地として利用されているというから、グーグルアースで眺められるように人工の構造物と瓦礫に埋め尽くされ、あの夢に見るような景観は既に跡形も無いようだ。

怖い物見たさでもう一度行ってもみたい気もするが、秩父セメントの私有地に不法侵入するのも気が引けるし、行ったとしてもあまりの変貌に涙するのがオチだろう。

やはり、“ここ”は古きよき時代の思い出として、心の奥に仕舞って置く場所なのかもしれない。
それとも、いっその事「あれは夢だったんだ・・・」と、忘れてしまったほうが幸せなのだろうか。

(追記)
カシバードで現在の地形図から「叶後」の俯瞰図を作ってみました。
これで、この場所がどんな地形なのか私の拙い文章よりずっとイメージしやすいでしょう。
中央やや左の「家」のアイコンが在る所が「叶後」だった場所ですが、ここが四方を山に囲まれたまさしく山上の隠れ里だったことがお解かりになると思います。
また、実際の牢口は画像よりずっと狭まった、岩壁の割れ目といった感じでした。

Kanouusirok

※ しかし、存在しないと言うと、写真でもいいからもう一度見たくなるのが人情ですよね。
誰かあの当時の資料など持っていないでしょうか?

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2011年7月 2日 (土)

“JETBOIL/SOL-Ti ”を弄り回す!②

便利度 :★★★★☆
工作度 :★★☆☆☆
推薦度 :★★☆☆☆
危険度 :☆☆☆☆☆


「“JETBOIL/SOL-Ti ”を弄り回す!①」からの続きです。


・・・次に、カップをハンギングタイプにするためと、ペラペラのコジーをカップに固定するための支点を取り付けることにしました。
今回は軽量なチタン製のカップの利点をスポイルしないよう、以前のリング式とは異なりカップ本体に手を加え、2個の支点を取り付けることにしました。

カップを良く見ると縁の巻き込み部分に間隙があるのをみつけ、この溝状の形を利用して最小限の大きさの支点を取り付ける方法がひらめきました。
支点パーツの上部をこの隙間に挿入し支持させようという訳です。

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(縁の巻き込み部分の間隙を利用して上部を固定する)

まず支点となるパーツを作りますが、コードを通す部分はチタン板に鋼線をハンドプレスで押し付けて曲げ、画像(↓)のようなに成型しました。

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(自作パーツ上端は楔状に加工し、巻き込み部分の間隙に圧入)

形状は画像をご覧いただくのが手っ取り早いと思います。
素材は1.2㎜と厚めのチタン板を使いましたが、これは後述のリベット留めに必要な厚さで、最低でもこの位の厚さは必要でしょう。

今回の改造の要は、カップの内側に、収納時バーナーのディッシュと干渉する突起ができないようにリベットをカシメる事です。
バーナーのディッシュ部はカップの内径より僅かに小さいだけですから内側に突起があると引っ掛かって収納ができなくなってしまうからです。

そこで、私は支点となる自作パーツのカップに接する面に、90度のカウンターシンクで面取りを行い、その状態でカップに仮取り付けをして、内側から皿ネジを入れて外側からナットで締め込むという方法で、カップ内側に漏斗状の凹みを付けました。
つまり、支点パーツの凹みと皿ネジの頭をプレス型にして、間に挟んだカップを成型するという訳です。

カップへの取り付けは、適当な長さに加工したφ3mmのアルミ潰しリベットを外側から挿入し、上記の方法で加工したカップ内側の凹部をリベットの潰し代の納まりとしてカシメます。
小さな片丸ハンマーを使い、“力”より“回数”という感じで慎重にリベットを潰せば完成です。

大昔の話ですが・・・、鍋釜の修理をする“鋳掛屋(いかけや)”もアルミ製の鍋の穴の修理にはリベットを使っていましたので、これが原因で水漏れすることは無いはずです。(こんな話をすると年齢が判っちゃいますかね・笑)

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(内側に突起を作らずリベット留めをおこなう)

実際にハンギングタイプにする時は下の画像のような方法でケブラーラインを固定すれば簡単です。
また、ラインが通る部分のエッジは面取りをし、細いラバーバフで鏡面に仕上げてラインの傷みを防いでおきましょう。

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(㊧のように結んでしまうか、あるいは㊥のように末端にリングを結んだラインを通して㊨のように留めれば着脱式も可能です)

以上でハンギングタイプのJETBOIL-Sol が、僅か数グラムの重量増加で完成したわけです。

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(ハンギングタイプへの改造完了!)

それから、ハンギングタイプ以外にもコジー上部のハイパロンにポンチで二ヶ所穴を開け、カップに一周させた細いコードを支点パーツに結び付けておけば(画像↓)、ハイパロン製のハンドルを持っても極端にずれてしまう事は無くなります。

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以上のような改造を行っても重さが数グラム増加するだけですし、この状態でも通常の収納手順なら五徳やスタビライザーを同時収納しても蓋は閉まりますので、使い勝手が良くなることはあっても悪くなっていることは無いはずです。


まぁ、ぶっちゃけた話、現在の私はハンギングタイプのストーブを使う機会もあまり無さそうですが、必要な方にはかなり有効な道具に進化するはずですから、、興味のある方は試してみたらいかがでしょうか?



【余談ですが・・・】
SOLのバーナーのディッシュ部にはかなり大きめの肉抜き穴がありますが、これを利用すればかなり有効な自作パワーブースターを付加できそうです。
現在構想中ですので期待して(?)お待ちください。
また、SOLのバーナーにウインドシールドとパワーブースターを付け、バーナーにカートリッジを装着したまま、ハンギングタイプに改造したスタンダードサイズのコンパニオンカップに収納したら・・・・。
 これぞまさに“SUPER-JETBOIL”と呼べる作品にになるんじゃないでしょうか?。

“山道具道楽”の酔狂な挑戦はまだまだ続きます!(笑)

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