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2011年7月16日 (土)

ヘッドランプ“STORM”に浮気する

便利度 :★★★★★
工作度 :☆☆☆☆☆
推薦度 :★★★★☆
危険度 :☆☆☆☆☆


私は最近、山用のヘッドランプとして“プリンストンテック社”の“QUAD”と“EOS”という製品を使っています。
その理由は、これらの製品が、通常の生活防水より一段上の、1メートルの水中に30分浸しても浸水しないというIPX7等級の防水性能を持っているからです。
雨の中の行動や、淵を泳ぐ時にも剥き出しでザックの雨蓋に入れておいてもOKというのは、私にとって大きなメリットです。
そんな訳で、特に“EOS”についてはトリチウム・マーカーを組み込んだりもしましたので、今後も長く愛用しようと考えていたのですが・・・。

Storm_1  Storm_2
(㊧QUAD、㊨EOS)

しかし、その後ブラックダイヤモンド社から上記のヘッドランプと同等のIPX7等級の防水機能を持った“STORM”というヘッドランプが発売されたのを知りました。
スペックを見ると、2種類のハイパワー白色LEDを搭載しそれぞれが無段階の照度ディマー機能を持つなど、かなりの多機能ヘッドランプのようです。
しかも、今までの殆どのヘッドランプの共通の問題点であった、ザックの中で不用意にスイッチが押され点灯してしまうという大問題を一気に解決するロック機能まで搭載されたとの事でした。

まだ“QUAD”も“EOS”も健在で、私には新しいヘッドランプを購入する必要性など無いのですが・・・。
いつもの悪い癖で・・・、また無駄遣いしちゃいました。
「山道具道楽」は道具に関しては浮気性なのです!

Storm_3
(STORM も電池が一本多い割には軽量だ)

・・・で、早速レビューして見たいと思います。

まず、“STORM”の機能ですが、通常のヘッドランプ機能としては、遠距離用コリメーターレンズ付き超高輝度ハイパワーLED1個の点灯と、近くを広く照らすためのハイパワーLED2個同時点灯の2モードがあり、しかもいずれのモードも点灯中のスイッチ長押しで無段階に明るさが変えられます。
照射角の広い近距離モードでディマー機能で照度を落とせば、テント内のランタンとしても便利に使えますから、これがあればテント泊でも別にランタンを持つ必要は無いでしょう。

Storm_5  Storm_6
(㊧遠距離モード、㊨近距離モード)

また、遭難した時以外はあまり使わない機能だと思いますが、早押し3回でストロボモード(点滅)にも切り替えられます。

トリチウムマーカーを組み込むため分解してみたところ、以上の計3個のLEDはいずれも表面実装タイプで、アルミの放熱板の上に取り付けられ耐久性も高そうな印象ですし、効果の程は判りませんがこのヒートシンクの熱をバッテリーに伝え寒冷時の起電力低下を防ぐ機能も備えているそうです。

さらに、他の登山用ヘッドランプに無い特徴が赤色の砲弾型LED2灯による“Night Vision”モードを搭載しているということでしょう。
波長の長い赤色の光は、網膜細胞に対する刺激が少なく、暗順応を妨げることなく視界を確保することができますから、混雑した山小屋で隣に見ず知らずの他人が眠っている状況でも、周囲の顰蹙を買わず水を飲んだり時計を見たりできて、結構便利かも知れません。

この赤色光の“Night Vision”モードへはOFFから3秒の長押で切り替わりますが、一度赤色灯モードにしておくと次に3秒の長押をするまではこの状態が保持されますので、山小屋などでは夜間はずっとこのモードにしておけば、突然の閃光で周囲に迷惑を掛ける心配も無さそうです。

Storm_7
(Night Vision モード、実際にはもっと赤い色!)

そんな訳で、この赤色モードは登山者以外でも夜間の戸外で目を暗順応させたまま星野図を見たり機器の操作を行わなくてはならない天文ファンにとっても最適な機能だと思います。

そして、特筆すべきなのがメインスイッチのロック機能です。
私も以前、ヘッドランプのスイッチがザックの中で知らぬ間に誤作動していて、いざ使用しようと思ったら既に電池は空っぽになっていた・・・、という苦い経験が一度ならずありますので、この機能には大注目していました。

この製品のロックアップは、機械的にスイッチが入らないようにするのではなく、回路を工夫してロックモード中はスイッチを押しても照明用のLEDには電流が流れなくなるような仕組みです。
ロックは6秒の長押しでON、もう一度6秒の長押しでOFFとなり、ロック時にスイッチを操作すると基板上の青色のチップLEDが点滅してロック状態だと教えてくれるようになっています。
ザックの中で不用意にスイッチが押され誤点灯するのは、多くの場合一瞬の接触によるものでしょうから、6秒もの長押しでロック解除という設定なら、誤点灯を99.99パーセント防ぐ事ができるでしょう。

また、ランタイムも遠距離(Distance)モードの1灯ハイパワーLEDでも50時間~200時間(ディマーで照度を落とした場合)、2灯の近距離(Proximity)モードで36時間~125時間との事ですから、電池が1本多いということを考慮しても、“EOS”のHi/6.5時間~Lo/60時間より格段に電池が長持ちすることになります。
きっとレギュレターや出力制限回路の設計が良いのでしょう。

その他、バッテリーの残量インディケーター(ONした時チップLEDが緑・黄・赤で点灯)なども備え、まさに至れり尽くせりの多機能ヘッドランプといった感じですし、計5灯ものLEDがあれば1灯式の物と異なり、LEDが1個故障したとしても真っ暗闇の世界で途方に暮れる事にはならないはずですから、高い防水性と相俟って信頼性の面でも申し分の無い製品と言えるでしょう。

さて、以上褒めてばかりですが・・・。
気になる点も無いわけではありません。

まず気になるのは、バッテリーが単4を4本使用するということです。
この手のLEDライトは、普通単4の3本使いが殆どなので、実は私も買って初めてこの事に気付きました。(汗)
まぁ、電池4本込みでも、3本仕様の“EOS”と較べてそう大きな重量増は無いですし、ランタイムも長くなっていますので単純比較はできませんが、スペアのバッテリーが1本余計に必要だということを考えると、実用重量としてはやや重くなってしまうかもしれません。

また、私の個体だけかもしれませんが、シリコン製の防水ガスケットの造りが粗い様な気もします。

それから、多機能は良いのですが1個のスイッチでモードの切り替えからディマーの作動、ロックアップまで総てを処理しなければならないので、ヘッドランプとしては操作がかなり複雑です。
複雑といっても覚えるのに苦労するほどではありませんが、操作法を知らない方にレクチャー無しで貸すと、借りたほうも操作に戸惑うと思われますし、持ち主でも半年使もわないと操作を忘れてしまいそうです。
最近物忘れの多くなった私は(涙)、格好悪いとは思いましたが、念のため裏蓋にインクの無くなったボールペンで「LOCK→6Sec/RED→3Sec・・・」などと操作の要点を刻んでおきました。
まぁ、操作の煩雑さは多機能と表裏一体ですからある程度は割り切るべきなのでしょうね。

ヘッドランプは日帰りの山行であっても必携のアイテムですし、ある意味では野営装備を持たない日帰りの山行で万が一灯火が必要になった時こそ、高機能のヘッドランプが必要になると考えたほうが良いでしょう。
その意味でも“STORM”は、極端な軽量化志向の方を除き、登山用としては私の考える最高のヘッドランプの1つであり、自信を持ってお奨めしたいベストバイ・アイテムだと確信しています。

さて・・・、次はこの“STORM”にトリチウム・マーカーを取り付けた時の様子を記事してみようと思います。


【余談ですが・・・】

そういえば、大学生の頃ですから40年近く昔でしょうか?、一時期フランス製の“ワンダー(Pile Wonder)”というヘンテコな山用のヘッドランプが一世を風靡した事がありました。
頭に着けるランプ部と電池ボックスがコネクター付きのコードで繋がった分離型のヘッドランプで、ブリキの玩具みたいな電池ボックスにも別にランプがあり、単独でも懐中電灯として使える製品でした。

確か、高田光政さんが輸入していた(?)せいなのか、あるいはフランス製という妙な憧れが働いたのか・・・、理由は定かではありませんが、一時期仲間は全員これを使っていました。

筐体上部に細引をつけて首から掛けるのが「粋」とされ、皆フランス人クライマーになった気分で胸に“ワンダー”をぶら下げ、涸沢や三田平あるいは真砂の天場を夕刻にうろついていたのも、今考えれば赤面モノの思い出ですね。

製品は・・・、と言えば、防水性はゼロだし、すぐ接触不良を起こすし、落とせば蓋が開いて電池が吹っ飛んでいくし・・・で、良いところと言えば単純な構造ゆえ曲げたり押したりして修理ができたこと以外は無かったはずなので、当時なんであんな物を得意になって使っていたのか・・・、今ではまったく理由がわかりません。
しかも、電池も見た事も無い箱型の奇妙な物体(3R12Eという規格らしい?)で、普通の電気店では買えず、わざわざ登山用品店までまとめ買いに行かねばならず、合宿前夜に慌てた記憶も鮮明に残っています。


今回、最新の多機能ヘッドランプの記事を書くにあたり、同じヘッドランプという道具一つをとって見ても、あの当時の最先端だった“ワンダー”と、現在最新の“STORM”を比較すると、かくも隔世の感があるものなのだなぁ・・・、と40年という時の流れをあらためて思い知らされた気がします。
進歩は良いことなのでしょうが・・・、私達人類はこの半世紀をあまりに早足で歩いてしまったのかもしれませんね。

ところで、話は変わりますが・・・、40年後の登山者が現在の最新型多機能ヘッドランプを見たとき、どんな感慨を抱くのでしょう。
今の私が大昔の“ワンダー”を見るのと同じように「昔はこんなに幼稚なモノを使っていたんだなぁ・・・」、と笑うでしょうか?
それとも・・・。

いずれにせよ、未来の世界で私達の末裔が、夜道を歩く時にヘッドランプでなく松明を使うようになっていない事を願いたいものです・・・。

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コメント

こんばんは。
DUG(EPI)からジェットボイル風クッカーが出ています。
ぜひ ジェットボイル等との比較をしていただきたいです
厚かましい要望ですが(^_^;)

投稿: ONS | 2011年7月29日 (金) 20時56分

ONSさんようこそ。

またJETBOIL みたいな早沸きストーブが出たのですか?
是非試してみたいですね!

なんて言ってると自己破産しちゃいそうですが・・・。(笑)

では!

投稿: 理事長 | 2011年7月29日 (金) 22時41分

どうも、始めまして!りんと申します。
ストームで検索して拝見させていただきました。
そして、ストームを買いました(笑)

私も、機能と明るさに魅力を感じて買ってみたのですが、使用初日に点灯しなくなりました(T_T)

検証のため分解してみたら仰る通り、メインのLEDに大きなアルミヒートシンクがありますね!かっこいい!
しかし基盤自体は、けっこう「お手製」な半田付けの箇所もあり、お世辞にも良い配線とは言えない印象。

おそらくストームは、手組みで作る箇所が多く、耐久性などで個体差が大きく出てしまうのではないかと思いました。
そんなワケで私のストームは返品となりました。
が、また懲りずにストームを買い直します♪

投稿: りん | 2014年9月29日 (月) 20時05分

“りん”さん初めまして!

初日で壊れちゃうなんて、ソロで山の中だったらどうなっちゃうかわかりませんよね。

ストームは中国で作っているんでしょうか?
基板は良いにしろ、基板とバッテリーの端子をつないでいる所など、ハンダ自体も質が悪そうな感じです。

では今後ともよろしく!

投稿: 理事長 | 2014年9月29日 (月) 20時38分

ちょうどソロ・山の中で点灯しなくなりました。
家で動作確認してる時は点灯してたんですけどね~。。。
バックアップに持っていたPetzlのe liteでなんとか事なきを得ました。

電池の裏ブタにMADE IN CHINAって書いてましたよ(笑)

投稿: りん | 2014年9月29日 (月) 21時13分

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