« “キャラバン”の新しい沢靴を買う時は・・・ | トップページ | シェル出し用“油圧シリンダー”を作っちゃおう!(試行編)① »

2014年11月17日 (月)

BDの“クアドラント”見ただけレビュー

便利度 :★★★★★
工作度 :☆☆☆☆☆
推薦度 :★★★★★
危険度 :☆☆☆☆☆
(まだ使っていないので外見のみの評価でスミマセン!)



お恥ずかしながら・・・、昨シーズンにランドーネブーツ(ATブーツ)を買い替えていたのを自分自身すっかり忘れてました。
とうとうボケが始まったのかもしれませんね。

さて、1年近く前の事ですが・・・、その時使っていたGARMONTも十分健在だったので買い替えの必要は無かったのですが・・・、次に履くんだったらどのブーツが好いのかな~、などとショップの陳列棚を見渡したのが間違いの元!
いつの間にかBDの“クアドラント”というATブーツを購入していました。

Bdatb_5
(13-14モデルの“クアドラント”)

しかしブーツを買ったのはいいけど、その直後、厄介な病気と診断され、結局スキーシーズンはもちろん、2回にわたる手術やら薬物治療やらで半年以上山に行けない状態となり、精神的にもかなりまいってしまいスキーブーツどころではなかったのです。(涙!)

秋になって沢に2本行けたものの、やはりこの歳でのブランクによる身體の衰えは本人の予想を上回り、現在少々鬱状態となっております。

そんな訳で、間近に迫ったスキーシーズンに想いを馳せ、何とかモチベーションを高めようと、スキー道具の点検を始めたところ・・・、やっと“クアドラント”があった事に気が付いたのです。

病気のせいとは言え、不憫にもこのブーツは持ち主の記憶から抜け落ち、一度も使われないまま型落ちの旧モデルになってしまったわけです。

そこでネタ不足の折でもあり、この道具への償いの意味も込め、まだ使ってもいないこのブーツの「見ただけレビュー」をしてみたいと思います。


ところで・・・、なんで常に冷静沈着な(?)私がこのブーツを衝動買いしてしまったかというと・・・。

まず、一見して爪先部のシェルの幅が広い事に気付いたからです。
日本人にも合うようにかなり広めに作られているのでしょうが、私の場合たいした滑りもしませんのでツアーブーツはコントロール性よりも快適性を優先して選んでいますから、このシェル幅を見たときすぐに試し履きしたくなってしまいました。

Bdatb_2
(GARMONTメガライド㊧とBDクアドラント㊨の比較、一見してシェル幅の違いが!)

私の場合、足はさほど幅広ではないものの、ジャストサイズのシェルを選ぼうとすると、必ずと言っていいほど小指の付け根の関節と舟状骨が当たり、シェル出しを行わないと足が痛く快適な山スキーが楽しめないのです。
かと言って、シェルを1サイズ大きくするとルーズすぎて、これまた快適なスキーができません。
まぁ、私は自宅でシェル出し もインナー成型もできる環境にありますが、やはりシェル出しの作業は面倒ですから、できるならインナー成型とパッテイングだけで済ませられれば手間要らずと言うわけです。

また、このブーツは滑降モードの前傾角が通常の18度だけでなく、より直立に近い14度に設定できるというのも魅力です。
これは筋力の衰えた私が山スキーをする時には重要な事で、長い滑降の時に大腿筋にかかる負担を軽減してくれるからです。

Bdatb_6
(レバーの基部を反転させることで前傾を14度と18度に切り替え可能)

さらに、歩行モードでの足首の自由度も、試着した限りでは今まで使用してきた兼用靴の中では一番良いように感じました。

Bdatb_10 Bdatb_7
(インナーやバックル部に歩行性向上の工夫がある)

あとは、インナーがBOAシステムですからダイヤルで簡単に締められのも良さそうです。
ダイヤルを回すと自動的にタンが引き上げられた状態で締まりますし、インナーがはじめからシッカリ締まっていると、行動中にシェルのバックルを締め直す必要も無くなるでしょう。

Bdatb_11 Bdatb_12
(インナーレースにBOAシステム搭載)

ただし、BOAシステムを内蔵したこのインナーを熱成形するときは熱風を吹き込むヒートライザー式の器具使用しなければならないので要注意です。
オーブンを使用するとBOAシステムの変形破損の原因になるので絶対に避けましょう。

Ti_4
(自作のヒートライザー)

そんな訳で、ツアーブーツとしては決して軽いとは言えませんし、剛性も“滑り屋”さんには物足りないかもしれませんが、総合的に考え、私のレベルの滑りには相応しそうな印象で、かなり期待が持てます。

Bdatb_3 Bdatb_4
(機能向上の代償は重量か?)

実際の使用は年末以降になりますが、追ってレポートなどさせていただければと考えています。

なお、今シーズンモデルもインナーの小変更とシェルのカラーチェンジだけのようですから、特に足の幅が広い方やガルモントやスカルパでは足指の関節が当たる方には優先順位の高い選択肢となるはずですよ。



【余談ですが・・・】

私が学生の頃ですから、もう四十何年か前の話です。
その頃はスキーブームで、日曜日の人気のスキー場ではリフト1時間待ちなどと言うのは当たり前で、しかもリフト乗り場の状態も悪く階段登校のまま1時間も並ばせられたり、1日に4~5本しか滑れなかったなんて話もよく聞きました。

また、当時は雪国行の夜行列車の車内も、網棚にスキーケースのフックの重ね掛けの鈴生り状態で、今思えば網棚がよくあの荷重に耐えられたかと不思議に思うくらいです。

当然神田のスキー屋もシーズンになると大忙しで、繁忙期にはお客さんに買ってもらった大量のスキーにビンディングを付けるのに徹夜の作業で対応せねばならなかったのです。

私も学生時代、スキー道具屋に縁のあるOBの命令で、この作業の応援にしばしば駆り出されましたが、当時としては結構割の良いバイトで、器用だった私は店長からも可愛がられそこそこ稼がせて貰いました。

当時でもメタルジグはありましたのでドリルの穴明けは簡単でしたが、ビスは手締めですから(しかもドライバーはポジドライブでなくフィリップスの#3でした!)最初は掌中マメだらけになり、また毎回握力を使い果たし翌朝はコップや歯ブラシががまともに持てなくなるほどの重労働だったのを思い出します。

それでも、ノルマもありましたし、若気の至りでバカみたいな競争心もありましたので「俺はネバダでも1台××何分で仕上がる」とか、「俺だって555なら1時間に○○台取り付けができる」・・・とか他愛の無い自慢話をしながら結構楽しく働かせてもらいました。
不定期バイトでしたが、それでも学生時代通算で何百台かのスキーにビンディングを取り付けたことになるはずで、そんな経験が、私が今でも自分でビンディングを取り付ける原点になっているのだと思います。

さて・・・、当ブログの山スキー関連記事ではDYNAFITのTLTビンディングを扱ったものが多く、特にアマチュアには取っ付き難いこのビンディングの取り付け方についても数年前からご紹介しています。

・・・と、言うのも、私がDYNAFITのTECビンディングを使い始めてから10年以上が経ちますが、当時はディアミール全盛で、当初DYNAFITは「斬新過ぎて扱い難いビンディング」との印象が強く、あまり人気が無い商品でしたので、取扱店にもこのビンディングに精通した方はほとんどいませんでした。

また、販売店でもメタルジグを持っていない場合もあったようで、欧文の取扱説明書の末尾には紙ゲージが印刷されていました。
そういえば、この頃はディアミールにもしっかりしたステッカーゲージが付属していましたよね。

Bdatb_13
(最近はユーザー自身での取り付けを防ぐためか?紙ゲージは付属しない)

そんな訳で、私は不慣れなショップに頼るのではなく、メーカーのマニュアルなどを参考に、自分なりにこの癖のあるビンディングをメタルジグ無しに自宅で取り付けする方を模索し、その実践をこのブログで紹介してきた次第です。

ところが先日“匿名”さんから、御親切にもこの取付方法が、“根本的に間違ってい”るとの御注進をいただきました。

しかしながら、私の掲載した取り付け方法は、10年以上前のものとはいえ実際のメーカーの取り付けマニュァルを参考にしたものですし、見解の相違こそあれ大きな瑕疵は無いと考えます。
欧文の原本は見つかりませんでしたが、10年以上前にDYNAFITを取り扱っていたライケルジャパン系の某代理店が和訳したと思われる取り付けマニュアルを知人からお借りできましたので、念のためその和約版の画像を掲載しご紹介しておきます。(画像をクリックすれば拡大表示されます)

当時はおおらかな時代で、代理店の取り付けマニュアルに「メタルジグが無ければ紙ゲージを使え・・・」なんて書いてあるのも面白いですね。

Bdatb_14
(中央やや下に「メタルジグが無ければ紙ゲージを使え・・・」の記載が!)

それから、トーピースのセンタリングについても私の記事と同じような調整法が記載されていることがお判りだと思います。

Bdatb_15
(センタリングの調整法も丁寧に記載してあった)

また、BCスキー全般は言うに及ばず、TECビンディングについて最も権威のある、世界的にも著名なウェブサイト“wildsnow.com”でも、“Do it Yourself: Mount your Dynafit TLT”という記事で自分でこのビンディングを取り付ける方法を紹介していますが、この手順も私の記事とほぼ同様な内容です。

だとすると、TECビンディングのオーソリティーである、この“Mr.Dawson”氏の取り付け方法も根本的に間違っている事になっちゃいますよね。

まぁ、一々反論するのも大人気無いのですが、現在のメーカーが推奨する、メタルジグと整った作業環境を持つプロの為の取り付け方法と、紙ゲージと汎用工具しか持たないアマチュアが、その環境の中で如何に確実に取り付けるか、を目指して工夫した方法は自ずと異なって当然の筈です。

それを単純に比較して「根本的に間違っている」などと堂々と宣うのは、知識はあっても応用のきかない所謂マニュアル人間の発想そのものでしょうし、形式的な代理店の講習を受けただけで「俺は有資格者だ」などと、上から目線の物言いをする権威主義は私の最も嫌悪するところであります。

私の、カナダの友人(古くからのテレマーカーでもあります)から聞いたのですが、彼は「北米の都市部以外では、BCスキーヤーの半分以上が自分でビンディングを取り付けるんじゃないかな・・・」などと言っていましたが、我が国で自分でビンディングを取り付ける方は全体の0.1%にも満たないでしょう。

この現実が、権威主義が幅をきかせ何でも他力本願と責任転嫁で済ませてしまう我が国と、自己決定権を重んじ自己責任で行動する者をリスペクトするアメリカ・カナダなどのD.I.Y.の先進国との文化の差の表象なんでしょうね。

法的な問題からマニュアルには建前上の杓子定規なコーションが記載してあっても、本音では「自分で勝手に弄って事故でも起こったらだれが責任取るんだ!」なんて野暮な事を言わない彼らの潔さが私は大好きです。

そして私は、意志と工夫と経験次第では素人でも汎用工具のみで、メーカー認証を受け、しかも専用工具を使用する自称プロと同等以上の取り付けが、誰にでもできると確信しています。

有資格者だか何だか知りませんが、私は自分が命を懸ける道具に関しては、昨日講習を受けて今日初めてビンディングを取り付けるかもしれない見ず知らずの他人に頼むより、自分の知恵を絞って自己責任で仕上げる方が安心して使用できますし、その方がよりクリエイティブに自然に親しむクールな生き方だと考えているだけの話です。
ぶっちゃけた話、それ以上でも、それ以下でもありません。

反論を含め、何かご意見があれば躊躇無くコメントいただきたいと思います。
特に、自分でビンディングの取り付けを行っている方のご意見を是非お伺いしたいですね。

|

« “キャラバン”の新しい沢靴を買う時は・・・ | トップページ | シェル出し用“油圧シリンダー”を作っちゃおう!(試行編)① »

山スキー・バックカントリー 2」カテゴリの記事

コメント

私もこのHPと“wildsnow.com”を見ながら、一昨年自分で取り付けました。問題なく使っています。「有資格者だか何だか知りませんが、私は自分が命を懸ける道具に関しては、昨日講習を受けて今日初めてビンディングを取り付けるかもしれない見ず知らずの他人に頼むより、自分の知恵を絞って自己責任で仕上げる方が安心して使用できます」に強い共感を覚えます。ありがとうございました!

投稿: いしやま | 2014年11月19日 (水) 00時44分

理事長お疲れさまです。
クワドランドも気になるブーツでしたので、ビンディングのお話と共に興味深く読ませて頂きました。

僕も理事長のアドバイスも頂き、海外のサイトなども見ながら、取り付けし、最近はインビスにも手を出していますが、正直、「ちゃんとした?」取り付けをしようと思ったら、思いのほか技術と知識、経験、道具がいる作業だと感じています。
それだけに、取り付けフィーも高いとも思わなくなりましたね。ただ有資格者というだけでは盲目的に信じる事も出来なくなりましたが(笑)
僕も、アルペンビンディングですが昔バイトで作業していましたので、講習も実情も何となく理解出来ます。

コレだけ情報が溢れる中、何を信じるかは、まさに自己責任だとつくづく思います。ただ、有資格者であろうとDIYであろうと、より安全に楽しむ為の知恵と工夫だと思うので、匿名で否定的な事だけを書き込むのは、ネットの「負の面」を強く感じます。
有資格者制度が安全維持の為の物でなく、ビジネス的な権利と思っている方がおられるならば、残念ですね。

投稿: katsu | 2014年11月28日 (金) 13時04分

“いしやま”さん“Katsu”さん、それから非公開希望の“あき”さん、“KG”さん、コメントありがとうございました。

私もこの世の中すべてが自己完結できる訳ではない事は重々承知しているつもりなんですが・・・、それでも自分でできることは、たとえ非効率的であっても自分でやってみないと気が済まないというへそ曲がりな性質なんです。
もちろん失敗もありますが、自分でチャレンジしなければ、その失敗さえも経験できませんからね。

そんな訳で、『山道具道楽』は今後もD.I.Y.指向の“山屋”を応援するつもりです。

投稿: 理事長 | 2014年11月29日 (土) 08時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« “キャラバン”の新しい沢靴を買う時は・・・ | トップページ | シェル出し用“油圧シリンダー”を作っちゃおう!(試行編)① »